この1本:「一月の声に歓びを刻め」 響き合う三つの物語
場所も登場人物も異なる三つの話を、4章仕立てで構成する。しかし三つを一つにしたというよりも、一つの物語を3様に変奏した趣だ。三島有紀子監督による「Red」(2020年)以来の長編劇映画。これまで以上に強い個性を放ち、監督自身の覚悟と叫びが聞こえてくるような力作である。 北海道・洞爺湖畔に住むマキ(カルーセル麻紀)が、年始に来た娘美砂子(片岡礼子)の一家を迎える。性適合手術を受けて女性として生きるマキは、47年前に死んだ次女れいこのことで苦しんでいる。東京・八丈島で牛を飼う誠(哀川翔)の元に、娘の海(松本妃代)が5年ぶりに帰省した。誠は交通事故に遭った妻の延命治療を中止したことを今も自問する。...