よねくら しん
撮影「朝の夢」(2020年)/「彼女来来」(2021年)/「はだかのゆめ」(2022年)/「鯨の骨」(2023年)/「一月の声に歓びを刻め」(2023年)/「きみとまた」(2023年)/「義父養父」(2023年)/「ナミビアの砂漠」(2024年)
河合優実が演じた主人公のカナ、共感できる人が半分、迷惑なヤツと反発する人が半分ではないか。自分に素直、気ままだが根はまじめ。いやいや。自分勝手で気まぐれ、チヤホヤされるのをいいことにやりたい放題、しかも無気力。今を生きる若者たちの、心情のリアルがありそうだ。 21歳、脱毛サロンで働くカナは、ホンダ(寛一郎)と一緒に暮らしながら、クリエーターのハヤシ(金子大地)とも付き合っている。ホンダは、ハヤシと会って泥酔し深夜に帰宅したカナを何も聞かずに介抱してくれるマメで優しい男だが、カナはあっさりとハヤシに乗り換えた。しかしハヤシと同せいを始めるや、かまってちゃんぶりを発揮。カナ最優先ではないハヤシに...
2024.9.06
場所も登場人物も異なる三つの話を、4章仕立てで構成する。しかし三つを一つにしたというよりも、一つの物語を3様に変奏した趣だ。三島有紀子監督による「Red」(2020年)以来の長編劇映画。これまで以上に強い個性を放ち、監督自身の覚悟と叫びが聞こえてくるような力作である。 北海道・洞爺湖畔に住むマキ(カルーセル麻紀)が、年始に来た娘美砂子(片岡礼子)の一家を迎える。性適合手術を受けて女性として生きるマキは、47年前に死んだ次女れいこのことで苦しんでいる。東京・八丈島で牛を飼う誠(哀川翔)の元に、娘の海(松本妃代)が5年ぶりに帰省した。誠は交通事故に遭った妻の延命治療を中止したことを今も自問する。...
2024.2.09
第37回東京国際映画祭「Nippon Cinema Now」部門出品作品。
監督・脚本は、初監督した「あみこ」(2017年)で、PFFアワードで観客賞を受賞した山中瑶子。「由宇子の天秤」(21年)、「サマーフィルムにのって」(20年)で数々の映画賞の新人賞を総なめにした河合優実が主演する。第77回カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞を受賞。 世の中も、人生も全部つまらない。やり場のない感情を抱いたまま毎日を生きている、21歳のカナ(河合優実)。優しいけど退屈なホンダから自信家で刺激的なハヤシに乗り換えて、新しい生活を始めてみたが、次第にカナは自分自身に追い詰められていく。 ©2024『ナミビアの砂漠』製作委員会
トラウマを描いた三つの物語。北海道・洞爺湖のほとりに住むトランスジェンダーのマキは、6歳で死んだ次女を忘れられずにいる。訪ねてきた長女との間にも葛藤を抱えていた。八丈島で牛飼いを営む誠は、妻の延命治療を止めた罪の意識に苦しんでいる。5年ぶりに再会した娘は、妊娠しているが、誠はそのことを聞けずにいる。大阪・堂島では、れいこが元恋人の葬儀に駆けつける。れいこは幼い頃に性暴力被害を受けていて、事件の現場でその記憶と向き合うことになる。 「幼な子われらに生まれ」などの三島有紀子監督が、自身が被害者となった幼少期の性暴力事件を基に構想した。コロナ禍で自身の企画が相次いで中止となる中で過去と向き合い、自...
結婚間近だった恋人と破局した間宮は、マッチングアプリで女子高生と会うが、その女子高生は間宮のアパートで自殺してしまう。うろたえて山中に埋めようとするも、いつの間にか死体は消えていた。間宮は、ARアプリ「ミミ」の中で、死んだ女子高生と瓜二つの少女〝明日香〟を発見、彼女の痕跡を追いかけているうちに、現実と幻想の境界が曖昧になっていく。 監督・脚本は、「ドライブ・マイ・カー」(2021年)、「ガンニバル」の脚本を手掛けた大江崇允。海の底に沈んだ鯨の骨の栄養を求めて群がる魚たちを、ARアプリ「ミミ」の中で半バーチャル世界の底に潜り込む人々に重ね、リアルとバーチャルが混濁する現代の寄る辺なさを迷宮ファ...
〝愛しているがゆえにセックスをしない〟という共通したテーマで、「愛うつつ」(2018年)や「きみは愛せ」(20年)と、自主制作で作品を生み出してきた葉名恒星監督の商業デビューとなる本作。生きづらい世の中の片隅で懸命に生きる若者たちの恋とセックスを描く作品を紹介する「マヨナカキネマ」レーベルから公開される。 昔の恋人のことを未だに忘れられずにいる主人公の自主映画監督、まるお役を務めるのは、「神田川のふたり」(21年)、「MOON and GOLDFISH」(22年)と主演作が続く平井亜門。まるおが思い続けるアキを演じるのは、テレビ、舞台で活躍中の伊藤早紀。 愛しているからセックスをしたくない...