Celine Sciamma
1978年11月11日 生まれ
脚本「パリ13区」(2021年)監督/脚本「秘密の森の、その向こう」(2021年)
ロンドンの生活も3年目。今年は気温があまり高くなかったせいか8月半ばのこの街は、既に肌寒くなり始め日も少しずつ短くなり、夏の終わりを意識させられる。こちらの映画館で出合ったお薦めの3本は、あることがきっかけで他者を見つめ直し、その結果自分自身を見つめ直していく、そんな物語たちだ。 カンヌ国際映画祭カメラドール監督の新作 1本目には、少年たちの心の機微を痛みと共に描いた「CLOSE/クロース」。本作を監督したのは、前作「Girl/ガール」で第71回カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督 賞)を受賞し、鮮烈なデビューを飾ったルーカス・ドン。主演に俳優デビューとなるふたりを起用し、美...
川原井利奈
2023.8.18
8歳の少女ネリーは大好きだった祖母を亡くし、祖母が住んでいた森の中の一軒家へ両親とともに片付けに来る。しかし、母マリオンは祖母との思い出に胸を締め付けられ、家を出ていってしまう。ネリーは森を散歩するうちに、母と同じ名前の少女に出会い、親しくなっていく。 「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマ監督・脚本作品。祖母、母、娘の3世代の喪失と心の安らぎの物語だ。移ろいゆく季節の木々と色づく葉、神秘的な中にも人が生きることの切なさやつながりを漂わせ、全てを受け入れる森の美しさに息をのむ。その森を介して生じる過去と現在を溶け込ませる演出で、違和感さえもスーと心に刻まれていく。 気がつけば世代や時間を超越...
2022.9.30
これはいい。美しく、胸にしみる映画です。見ているときから、目に映るひとつひとつの場面が自分の記憶に刻み込まれてゆき、この映画を忘れることはないだろうとはっきりわかる。紛れもない傑作ですが、さて、どうして優れているのかを言葉にするのが難しい。説明なんかいいから映画館に行って見てくださいといいたいんですが、それでは映画批評になりませんね。拙い言語化を試みましょう。 祖母を亡くした8歳の少女 お別れを告げる少女から映画は始まります。どの部屋にいるのも老人で、そのひとりひとりに少女がさようならという。でもベッドに横たわる人のいない部屋があって、そこでは老いてはいない女性が部屋を片付...
藤原帰一
2022.9.11
華やかなパリのイメージと異なり、再開発で高層マンションが並び多文化多人種の人が暮らす13区。時代のリアルな空気感が洗練されたモノクロ画面に映える。デジタルネーティブ世代の赤裸々で生々しい息づかいが聞こえてくる新たな感覚の青春映画だ。 コールセンターで働く台湾系仏人女性のエミリーは、アフリカ系仏人男性の教師カミーユとルームシェアを始める。2人はすぐにセックスするが、ルームメート以上の関係にならない。地方出身でソルボンヌ大学に復学したノラは、パーティーで金髪のウイッグをつけたために、SNSでアダルト動画を配信するセックスワーカーの〝アンバー〟と誤解され、ひやかしの対象になり通学できなくなる。 ...
2022.4.22
8歳のネリーが森の中で出会ったのは、自分とそっくりの同い年の少女。母と同じマリオンという名前で、彼女の家に招かれる。 © 2021 Lilies Films France 3 Cinéma