この1本:「落下の解剖学」 全編にみなぎるスリル
昨年のカンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いたフランス映画だ。全米賞レースでも高評価を得て、アカデミー賞では5部門の候補に。仏グルノーブルの雪山での不審死事件をめぐるミステリー劇なのだが、全編に濃密なスリルがみなぎり、2時間32分の長尺もまったく苦にならない。 自宅の山荘近くの雪原で血を流して倒れていた中年男サミュエルを発見したのは、視覚障害を持つ11歳の息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)。警察の捜査の結果、ベストセラー作家で妻のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)が殺人罪で起訴される。 ここから真相究明の舞台は法廷に移るが、そこでの具体的かつ生々しいやりとりから目が離せない。検事は被害者...