この1本:「護られなかった者たちへ」 災禍の不条理と救い
インディペンデントのピンク映画からメジャーの恋愛モノまで幅広く手がけてきた瀬々敬久監督、「64 ロクヨン」「友罪」など社会派ミステリーの系譜にも連なっている。中山七里の小説を原作にした猟奇連続殺人事件の物語だが、東日本大震災を起点として今に続く悲劇を描き出そうとする。 震災から10年目、宮城県で福祉関係職員が餓死させられる事件が発生する。身動きを取れなくして監禁、放置されたのだ。刑事笘篠(阿部寛)は、事件直前に刑務所から出た利根(佐藤健)を追う。施設で育った利根は、震災の避難所で出会った少女カンちゃん(石井心咲)、一人暮らしのけい(倍賞美津子)と家族同然の暮らしをしていたが、けいが生活保護を...