この1本:「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」 悪のヒーローの内面
「バットマン」の悪役を主人公にした前作「ジョーカー」で、〝負け組〟のコメディアン志望のアーサーは悪のヒーロー〝ジョーカー〟として祭り上げられた。格差社会に蓄積した鬱屈が暴力として噴出するまでの物語が現実と重なり、アメコミ原作ものとは思えぬ衝撃作だった。その続編だから、さらなる暴力と混沌(こんとん)を予想されるだろうが、トッド・フィリップス監督は全く別方向にかじを切った。「フォリ・ア・ドゥ」は、妄想や幻覚を共有する精神障害の一つという。 アーサー(ホアキン・フェニックス)は病院に隔離され、5人を殺害した罪で裁判が行われるかどうか結論を待っている。病院の外ではジョーカーを巡る不穏な騒動が続いてい...