Y2K=2000年代のファッションやカルチャーが、Z世代の注目を集めています。映画もたくさんありました。懐かしくて新しい、あの時代のあの映画、語ってもらいます。
2024.8.02
肉体は17歳、中身は37歳――さえない男が人生をやり直す「セブンティーン・アゲイン」
誰でも人生で後悔したことの一つや二つはあるだろう。
私も過去に戻ってやり直したいことがいっぱいある。
自分の選択は正しかったのか、別の選択肢を選んだら何かが変わっていたかもしれない。
過去は変えられないが、未来は変えられることをこの「セブンティーン・アゲイン」は教えてくれた。
17歳のときの決断を後悔し続ける、さえない男マイク・37歳
マイク・オドネル37歳。
17歳の頃は、バスケットボールの花形選手で恋人もいて高校のスターとしてキラキラした青春を送っていた。しかし現在の彼は妻との離婚危機、子どもたちからは煙たがれ、仕事でも昇進を果たせず、どん底の人生を送る日々。彼はずっと17歳の時に下したとある決断を後悔していた。そんな男がある日、肉体だけ17歳のころの自分に戻ってしまう。若返った17歳のマイクは自らの手で家族との関係、そして人生を変えていく。
かつて彼はバスケでプロを目指せるほどの実力を持っていた。スカウトが来ている大事な試合の当日、彼は恋人から妊娠を告げられる。彼は試合を投げ出し、彼女と一緒になることを決断する。当時の自分には、それが最善策だと思えたのだが、20年たった現在「あの時、試合に出ていたらこんなはずではなかった」と自分自身の選択に後悔している。
タイムスリップして知る現実と、変化する家族への思い
この映画のポイントは、よくありがちなタイムスリップ映画ではないことだ。主人公だけが17歳の肉体に戻ってしまうが、過去に戻るわけではなくその他の登場人物たちは現在進行形で時間は経過していく。そのため、彼が高校生に戻っている最中に離婚調停が行われたり、親友に父親のふりをさせたり、所々にクスッとさせられる笑いのポイントが詰まっている。
高校生の肉体を手に入れたマイクは、自分が通っていた高校に、別人としてもう一度通うことにする。
実はその高校には現在、彼の子どもたちも通っていた。息子はいじめられ、娘はロクでもない男と付き合っていることを知るマイク。子どもたちとずっと向き合ってこなかった彼だが、同じ学校の友達として子どもたちと真剣に向き合うようになる。彼のおかげで子どもたちの心情や環境も徐々に変化していく。
17歳の体になったマイクは、妻と「夫婦」としてではなく「息子の友達」という関係で再会する。対面時の妻は、年齢は離れているが若い頃の夫にそっくりなマイクに驚くが、すぐに打ち解け一緒に趣味のダンスをしたり、ガーデニングをしたりと楽しい時間を過ごす。しかし、彼女にとって彼は「息子の友達」でしかなく、自分の夫だとはなかなか気づかない。
夫だとは気づかれないが、マイクは妻に誠心誠意向き合い改めて彼女への気持ちを再認識する。37歳のマイクは、家族とうまくいかないことが当たり前になり過ぎて半ば諦めていたが、17歳の高校生になったことで彼自身の考え方や家族への接し方が変化し、家族を大切にすることの大切さに気づいていく。
「経験」の重みを感じさせ、過去から前を向く勇気をもらう
この映画を見ていくうちに気付いたことがある。それは、37歳の見た目の彼は何もかもがダメダメなさえない男なのに、17歳の彼はまともでちゃんとしていて強い気持ちを持っているように見えることだ。よく言う「◯◯歳にしては大人っぽいね」みたいな感じである。
私はふと思った、彼の歩んできた人生は決して間違っていなかったのではないかと。
17歳に戻った彼の言動は全て、彼のこれまでの人生経験があってこそ出てくるものだし、彼の37年間がなければ生まれなかったものである。私はよく「大人になったら分かるようになるよ」と言われてきた。社会人になり、大人の仲間入りだ!と思うこともあるが、社会から見れば自分はまだまだ小娘にすぎないはずだ。「大人になったら分かること」のほんの触りくらいしか分かっていないのかもしれない。この映画では、「大人になったら分かること」の意味が少し理解できたような気がした。
私は後悔していることがたくさんある。あの時、別の選択肢を取っていたら今とは全く違う人生を歩んでいたかもしれない。過ぎたことを後悔してもしょうがないが、ふとした時に思い出してしまう。この映画は、過去に戻って2度目の人生をやり直すわけではないことに妙に現実味があり、ひかれてしまう部分である。
「自分の人生は自分次第でどんな方向にも変えることができる」
後悔している過去がある人たちに未来を向く勇気を与えてくれる作品だ。
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