( C )2022 映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会

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2022.9.26

受け入れて終わらせる、失ってもなお生きる――。人のもろさと強さを突きつけられる85分「マイ・ブロークン・マリコ」

誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。

宮脇祐介

宮脇祐介

ヘルプレスな場面が延々とスクリーンに映し出される。
永野芽郁演じるOL・シイノトモヨがこれでもかという日常にもてあそばれ、その日常に埋もれていく。
そんなシイノは当然やさぐれている。
子供の頃から吸っているたばこは本数が増え、酒をあおり、会社のパワハラ上司には無視を決め込む。
 
そんな日常からの脱出のきっかけが中華料理店でラーメンをすすっているときに見たテレビから流れてきた、親友マリコの自死のニュースだった。
自分の不幸をすべて受け入れ、だんだんと崩れていったマリコ。
そんなマリコの唯一無二の友達シイノは、彼女が虐待にあっていた父の元から遺骨を奪い返す作戦を思いつきで計画する。
そして、無理やり奪取した遺骨と、マリコが行きたがっていたまりがおか岬への旅に出るのだった。
 


生と死、善と悪、それぞれが放つエネルギーに触れた

永野芽郁の汚れっぷりに心がときめいた。
泣くわ、わめくわ、毒づくわ。
こんな役も彼女ははまるんだなあ。
その挑戦の心意気がスクリーンに広がっていた。
 
また「マイ・ダディ」に続いて、死んでいる役、マリコを演じる奈緒の妖精感も効いている。
暑苦しいくらいのシイノへの愛と束縛、そしてケロッとダメ男にだまされ離れていくマリコの演技は、彼女の本領発揮といえるだろう。
 


映画はこれでもかと語られる回想シーンの悲しみが心を揺さぶる。
 
何だか3月に亡くなった青山真治監督の北九州サーガ3部作を思い出させるように、人の悪意がどんどん湧き出てくる。
 
しかし後半、窪田正孝演じる釣り人が出てきたあたりから話は好転していく。
さっきまでの悪人天国だったこの世は何だったのだろうか。
「北風と太陽」の童話のように話が突如温かみを帯びてくる。
シイノと釣り人との別れのシーンにはなんだかじんわりしたなあ。
 
そして、訪れる圧巻のラストシーンには戸惑い、やがて涙した。
賛否はあると思うが、このシーンがタナダユキ監督の真骨頂なのかもしれない。
 
人はそれでも生きて行くという覚悟を教えてくれる貴重な映画――。
ビターな映画の魅力にすっかりハマった。
 
ぜひとも今週末映画館にてご覧ください。
 
追伸:一度お会いしたタナダ監督の、一筋縄ではいかない脚本の話を思い出しました。よい作品を、ありがとうございました。

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ライター
宮脇祐介

宮脇祐介

みやわき・ゆうすけ 福岡県出身、ひとシネマ総合プロデューサー。映画「手紙」「毎日かあさん」(実写/アニメ)「横道世之介」など毎日新聞連載作品を映像化。「日本沈没」「チア★ダン」「関ケ原」「糸」「ラーゲリより愛を込めて」など多くの映画製作委員会に参加。朗読劇「島守の塔」企画・演出。追悼特別展「高倉健」を企画・運営し全国10カ所で巡回。趣味は東京にある福岡のお店を食べ歩くこと。

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