「母性」完成報告会に登壇した、(左から)永野芽郁、戸田恵梨香、廣木隆一監督=鈴木隆撮影

「母性」完成報告会に登壇した、(左から)永野芽郁、戸田恵梨香、廣木隆一監督=鈴木隆撮影

2022.10.28

永野芽郁 「スイッチが入った戸田さん、怪物みたいだった」 「母性」舞台あいさつ 東京国際映画祭

第35回東京国際映画祭が始まります。過去2年、コロナ禍での縮小開催でしたが、今年は通常開催に近づきレッドカーペットも復活。日本初上陸の作品を中心とした新作、話題作がてんこ盛り。ひとシネマ取材陣が、見どころとその熱気をお伝えします。

鈴木隆

鈴木隆

第35回東京国際映画祭のガラ・セレクション部門に出品された「母性」の完成報告会が27日、東京・有楽町で開かれ、主演の戸田恵梨香と永野芽郁、廣木隆一監督が登壇した。湊かなえの同名ベストセラー小説の映画化で、戸田が娘を愛せない母ルミ子、永野が母に愛されたい娘清佳(さやか)と、人気女優2人が母性という多様でつかみどころの困難なテーマに挑んだ話題作だ。
 

戸田恵梨香「芽郁ちゃんが母親と見てくれました」

戸田は撮影前「親子ほど年が離れていないので成立させられるか不安だったが、芽郁ちゃんが母親と見てくれた」と話した。一方の永野は「戸田さんが主演と聞いた段階で、やります」と即決し、「いつかご一緒したかった」。ただ、現場では「スイッチの入った戸田さんは怪物みたいで恐ろしくて、誰も声をかけられないくらいルミ子になりきっていた。貴重な経験をさせてもらった」と感謝の言葉を述べた。
 
撮影を振り返って、大変だったシーンを聞かれた戸田は「火事のシーン。私と清佳、事実の三つの視点があって、理解しながら演じた」。大地真央演じる実母と娘の3人のシーンは「難しいというより、意思疎通を図りながら撮った」と語り、ルミ子のキャラクターにとって最も重要な場面になった。
 

うまくいかない母娘関係描く

司会から「戸田さんの新境地では」と聞かれ「私は頭しか使っていない現場だった」と戸田。
 
「ルミ子は娘のままでいたい女性。母に愛され続けたいと思うのは世界共通の感情だと思うが、ルミ子は親から受け取った愛情、受け継いだ意志、経験に基づいた価値観を、娘に押しつけてしまう。ルミ子にとっては普通の行動なんだけど、はたから見たらおかしい。それでも、異常者に見えてはいけない。彼女の中ではどこまでが普遍的でどこまでが狂気なのか、表現する上で考えた。ルミ子自身も本来の姿を知らないし、意図的ではないこともある」
 
永野は「清佳は母に、ただただ愛されたい、喜んでほしいと思う女性だったので、こうも(母と娘は)うまくいかないかと感じていた」と振り返る。親子関係についても「共感できない部分が多いが、娘が母に愛してほしいと思う気持ちには共感できた」という。「(今回の役は)難しいと思っていたが、戸田さんについて行く」と決めて、「戸田さんを見ているだけで大丈夫と感じていた」。
 

広い世代の感想聞きたい

本作はカナダ・バンクーバー国際映画祭に出品され、2回の上映はともに満席の盛況ぶり。湊と参加した廣木監督は「ココで笑うかというシーンがいくつかあって、特にルミ子の義母役の高畑淳子さんが笑いを取っていた」と披露。すかさず戸田も「私も(高畑さんのシーンでは)ずっと笑っていました」と笑顔を浮かべた。湊がこの作品を大変気に入っていて、観客からの質問にほとんど答えていたという。広木監督は「湊さんはこの映画のおかあさんのように見えて、母性を感じた」と語った。
 
最後に、戸田が「この映画を客観的に見られなかった」とした上で、若い世代からは「考えさせられた」「最後の清佳に救われた」といった感想があるようだと話した。「ルミ子の目線、清佳の目線、もっと上の世代の母の目線などさまざまな感想をお聞きしたい」と話し、さらに「父性もやばい、という話になっています」とニヤリとして付け加えた。
 
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ライター
鈴木隆

鈴木隆

すずき・たかし 元毎日新聞記者。1957年神奈川県生まれ。書店勤務、雑誌記者、経済紙記者を経て毎日新聞入社。千葉支局、中部本社経済部などの後、学芸部で映画を担当。著書に俳優、原田美枝子さんの聞き書き「俳優 原田美枝子ー映画に生きて生かされて」。

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