第74回ベルリン国際映画祭は、2月15~25日に開催。日本映画も数多く上映されます。戦火に囲まれた欧州で、近年ますます政治的色合いを強めているベルリンからの話題を、現地からお届けします。
2024.2.21
目指すは世界 若手監督支援、ベルリンでも 第74回ベルリン国際映画祭
日本映画の将来のために海外展開は不可欠と、さまざまな支援が本格化している。第74回ベルリン国際映画祭にも、前回に続き若手監督が自分たちを積極的に売り込む姿が見られた。
見本市で企画をピッチ
文化庁は日本映画の海外発信事業の一環として、2023年に続き、若手映画監督を派遣。海外映画祭の出品実績がある若手監督を公募し選抜。ベルリン国際映画祭と併設の見本市「ヨーロピアン・フィルム・マーケット」での企画ピッチなど、海外の製作者や配給業者との関係構築を後押しした。
今回も3人がベルリン入り。金子由里奈監督は初の商業映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」が23年に公開されたばかり。今回は「植物が人間に脅威を与えるホラー映画」の企画という。「特異なアイデアだと言われ、普遍的な物語になり得ると感じている。日本国内では通りにくい企画も、視野を広げて製作資金を集め、開発したい」と手応えを語った。
三人三様 新たな日本映画を
工藤将亮監督は社会問題を映画に取り込んできた。沖縄の現実を描いた第3作「遠いところ」は国内外で高く評価されている。工藤監督は「日本独自の題材を発信することで、海外からも興味を持たれると思う」と語る。企画中の新作は、海外に比べて整備が遅れている共同親権を扱うという。「国際共同製作や海外公開によってリスクヘッジしたい」と日本映画市場を超えた作品を目指す。
藤元明緒監督は「僕の帰る場所」「海辺の彼女たち」と、日本に暮らす外国人の苦境を描いてきた。新作はミャンマーを題材にした作品で、撮影はマレーシア、日本人は登場しない作品という。製作資金の4割は、欧州など海外からの調達を目指す。「国際的なチームで、〝アジア映画〟を作りたい」という。
大使館で初パーティー
文化庁は60億円を計上し、若手クリエーター育成のための基金を設立。映画を含む創作活動で海外を目指す若手に対し、企画開発から海外展開まで一貫して支援する。基金から支出することにより、複数年にわたる継続的な支援が可能になるという。
今回の映画祭期間中には、在ベルリン日本大使館で内外の映画関係者を招いたパーティーも初めて開催。若手監督らに英語で企画ピッチする場を設け、製作者との出会いの場を演出した。文化庁職員は「行政の支援は『縦割り』と批判されることが多いが、外務省、経済産業省、文化庁が一体となって取り組んでいる」とアピールしていた。