「Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下」のロビー=井上知大撮影

「Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下」のロビー=井上知大撮影

2023.6.28

渋谷の大人の映画館「ル・シネマ」復活 国際女優マギー・チャン特集でこけら落とし

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井上知大

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東京・渋谷の東急百貨店本店跡地の再開発に伴い、2023年4月から休館していた映画館「Bunkamuraル・シネマ」が6月16日、渋谷駅前の商業ビル「渋谷東映プラザ」の7階と9階に移転し、「Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下」として新たなスタートを切った。落ち着いた雰囲気の館内に、個性的な特集上映。若者の街の大人の映画館が、駅直近に復活した。


渋谷・宮益坂下交差点に面した「Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下」=井上知大撮影 

2スクリーン 座席ゆったり

大規模な再開発が続く渋谷。ル・シネマは道玄坂2丁目から、「渋谷ヒカリエ」や「渋谷スクランブルスクエア」といった再開発の象徴的な高層ビルが間近に見える位置へとやってきた。真下に、明治通りと宮益坂が交差する「宮益坂下交差点」があり、絶えず老若男女が行き交う。
 
スクリーンは二つで、7階が268席、9階が187席。2022年12月に閉館した映画館「渋谷TOEI」の内装を整え、居抜きで利用した。前後の座席と座席の間が広く、ゆったりと鑑賞できる。前身の渋谷TOEIの良さが生かされている。


「Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下」のスクリーン=井上知大撮影

観客こそスター! 影色カーペットに込めた思い

「今日は有給休暇を取って来ました」。16日午前10時のオープンにやってきた渋谷区の会社員男性(24)は目を輝かせて言った。大の映画好きで、今年は既に290本の映画を映画館で鑑賞しているという。「明るいポップな劇場になるのかと思っていたが、照明を抑えたクラシックな雰囲気で驚いた。でもかっこいい」と満足そうだ。
 
大人びた雰囲気の内装を手がけたのは、建築家の中山英之さんだ。床に敷かれた暗灰色カーペットに最もこだわったといい、「映画は光と影の芸術。影色(暗灰色)のカーペットを劇場に敷き、その上に映画を愛するお客さんが集まってくることで生まれる映画館を目指した」と語っていた。劇場の主役、すなわち光が来場客らで、影がカーペット、二つが合わさり完成されるというコンセプトだ。
 

再開発完了までの時限移転

1989年に開館した複合文化施設「Bunkamura」は、ル・シネマのほか舞台や美術館などが併設されていた。再開発に伴い、クラシックなどのコンサートホール「オーチャードホール」を除き2027年度中まで長期休館している。東急本店跡地に建設される新たな施設と一体化され、営業を再開する予定。各施設はそれまで一時的に移転し営業をする。
 
ル・シネマも元のBunkamuraへ戻る予定だ。中山さんは「約5年という期間限定なのに、内装など全てを一から作り替えるといった大がかりなことをする時代ではない。なるべく廃棄物を出さないようにした」とも話した。


「Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下」の上映作品ポスター=井上知大撮影

こけら落としは「マギー・チャン特集」

こけら落としは、女優マギー・チャンの出演作特集だ。初回上映「クリーン」のチケットを購入した女性(54)は、「ル・シネマがオープンしたときは大学生で、当時から社会人になりたての頃まではよく通っていた。マギー・チャンは大好きな女優で私にとって『ドンピシャ』な企画」となつかしみ、「子育てが一段落し、駅にも近くなったので来やすくなった。以前の少し離れた場所も好きだったけれどね」と笑顔を見せた。この日は約300人が訪れた。
 
かつては、百貨店や他の文化施設との回遊性が強みで、女性客も多かったル・シネマ。同館の編成担当、野口由紀マネジャーは「映画監督ではなく、女優にフォーカスした特集がル・シネマらしい」とし、「マギー・チャンは、現在は映画女優の仕事から遠ざかっているが、国際的に活躍しており、自国語の中国語以外にフランス映画も織り交ぜた重層的なフィルモグラフィーになる」と胸を張る。
 

新しい出会いを

ル・シネマで01年3月末から15週にわたって上映され大ヒットした「花様年華」(ウォン・カーウァイ監督)ほか、第57回カンヌ国際映画祭で女優賞に輝いた「クリーン」(オリビエ・アサイヤス監督)、香港で生きる男女の恋をテレサ・テンの名曲と共に描いた「ラヴソング」(ピーター・チャン監督)など多彩な作品を、4Kデジタル版や35ミリフィルムの映像で味わえる。特集は7月13日まで。
 
内覧会で中村由紀子・プログラミングプロデューサーは「これまでは、複合文化施設として音楽、演劇、美術など、Bunkamura内の他ホールとの融和生をはかれる特徴があった。しばらくは異なる環境になる一方、『渋谷駅から最も近い映画館』として新しいお客様に出会えるのをスタッフ一同、胸を弾ませている」とあいさつした。

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ライター
井上知大

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いのうえ・ともひろ 毎日新聞学芸部記者

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