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2023.3.02
「ラーゲリからのメッセージ~シベリア抑留の記憶をつなぐ~」in KITTEに行ってみた
シベリア抑留者と日本で帰りを待つ家族の愛を描いた「ラーゲリより愛を込めて」(毎日新聞社など製作委員会) が動員190万人を超え異例の大ヒットロングラン上映中です。
現在、東京都千代田区のKITTE地下1階で「ラーゲリからのメッセージ~シベリア抑留の記憶をつなぐ~」を開催している舞鶴引揚記念館館長の奥本護さんは「企画当初は公開から時期がずれていて残念だと思っていたのですが、映画がロングランになってくれたおかげで多くのお客様に来場いただいています」と手ごたえを語ってくれました。
今回は多くの抑留者を迎えた京都府舞鶴市にあり「ユネスコ世界記憶遺産」登録資料を多数所蔵する舞鶴引揚記念館と都内新宿区でシベリア抑留など戦後の労苦に関する貴重な実物資料を多数所蔵・展示する平和祈念展示資料館の合同展示です。
以前紹介した「袖のない防寒着」などの平和祈念展示資料館所蔵資料のほか、舞鶴引揚記念館の印象的な「ユネスコ世界記憶遺産」登録資料が展示されています。
ノルマはロシア語! 袖のない防寒着? 「ラーゲリより愛を込めて」を見て、平和祈念展示資料館に行ってみた - ひとシネマ (mainichi.jp)
その中の1点、「白樺日誌」は抑留体験者の瀬野修さん(故人)が紙の代用として白樺の樹皮に空き缶を加工したペンで、煙突のすすを墨にして200首あまりの和歌をしたためたもの。収容所ではたびたび所持品検査が行われており、文字資料は必ず没収されました。また、帰国後も連合国軍総指令部(GHQ)がソ連から持ち込んだ文字資料を没収していたため、奇跡的に持ち帰ることができた貴重なものです。食糧だけでなく、物資の不足の中で何とか自分の正常な精神を保つために書きつづっていたのかもしれません。
また、資料は抑留体験者やその家族だけではありません。大阪府門真町(現問真市)の松下電器産業(現パナソニック)に勤めていた坂井仁一郎さん(故人)はたまたま聞いていたラジオから流れる氏名と住所を読み上げるソ連からの日本語放送を耳にして「これは重要な情報だ」と自ら判断しました。その放送を聞きとり、私財で特製のハガキを作り、ラジオで流れた安否情報を家族に伝えたといいます。その数約700通。中には宛先不明で返ってくる物もありましたが、郵便局員がその内容を知って近隣の郵便局内に該当者がいないか転送した付箋の形跡が見られる物もありました。戦後の混乱期の中に善意で行動を起こした坂井さんの活動は心打たれるものでした。
展示場には舞鶴引揚記念館で語り部活動をしているスタッフもいます。展示物の質問をしてみるとさらに理解が深まります。ぜひとも会場で声がけしてみてはいかがでしょうか。
展示は5日18時半まで(最終日以外は20時まで)。東京シティアイ パフォーマンスゾーン(東京都千代田区丸の内のKITTE地下1階)にて。なお、展示物は資料保護の観点からレプリカを展示しています。
「ラーゲリより愛を込めて」のBlu-ray&DVDが7月7日に発売されます。
豪華版Blu-ray8000円、豪華版DVD7000円、通常版Blu-ray4800円、通常版DVD3800円 ※全て税別。■発売元 TBS ■発売協力 TBSグロウディア ■販売元 TCエンタテインメント