「アムステルダム」©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved

「アムステルダム」©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved

2022.10.29

「アムステルダム」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

第一次世界大戦で負傷した米兵バート(クリスチャン・ベール)とハロルド(ジョン・デビッド・ワシントン)が、看護師バレリー(マーゴット・ロビー)に命を救われる。固い絆で結ばれた3人は、1933年のニューヨークで再会を果たすが、バートとハロルドが殺人のぬれ衣を着せられたうえに、さらなる巨大な陰謀に巻き込まれてしまう。

「アメリカン・ハッスル」のデビッド・O・ラッセル監督が、史実に想を得た自作のオリジナル脚本を映画化した。ラミ・マレック、ロバート・デニーロらの大物を脇に配したオールスターキャスト大作で、1930年代の風俗を再現した映像は艶やかでゴージャス。

しかし男女3人の友情劇が殺人ミステリー、謀略サスペンスに転じていくストーリー展開は迷走気味で、スラップスティック・コメディー調の語り口も混乱に拍車をかける。エネルギッシュな映画的魅惑はぎっしりだが、むちゃに欲張りすぎた野心作との印象もぬぐえない。2時間14分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪ステーションシティシネマほか。(諭)

ここに注目

誰が主役でもおかしくない俳優だらけだが、単なるにぎやかしではなく、それぞれが個性を生かした印象的な人物を演じていた。中でもデニーロはさすがの存在感。彼の言葉の説得力で、出演者以外もいろいろ豪華すぎて忘れていたけれど、これは〝ほぼ実話〟なのだと思い出した。(久)

【関連記事】
・この1本:「窓辺にて」 淡くこじれる今の空気
・特選掘り出し!:「NOVEMBER/ノベンバー」 美しく残酷なメルヘン
・さすらいのボンボンキャンディ
・シネマの週末