第78回毎日映コン表彰式で、TSUTAYA DISCAS映画ファン賞を受賞した「美しい彼 ETERNAL」の八木勇征=前田梨里子撮影

第78回毎日映コン表彰式で、TSUTAYA DISCAS映画ファン賞を受賞した「美しい彼 ETERNAL」の八木勇征=前田梨里子撮影

2024.2.20

「事故を経験したことにより『死』のリアルさを知った」大学生ライターが見た第78回毎日映画コンクール表彰式

毎日映画コンクールは、1年間の優れた作品と活躍した映画人を広く顕彰する映画賞です。終戦間もなく始まり、映画界を応援し続けています。

堀陽菜

堀陽菜

「去年と比べて、今年の毎日映コンを見てどうでしたか」と、コンクール終了後に軽く質問された。即座に「そうですね……」と続けて自分の言葉を紡いだ。軽く受け答えたつもりだったのだがとっさに出てきた言葉が、「今年は自分のアイドルグループのことばかり考えるコンクールでした」と知らぬ間に答えていた。思いがけない自分の返答に驚いた。
 
というのも、昨年も同様にひとシネマの学生ライターとして毎日映画コンクールに参加し、また同様に記事を書いた。その内容は実に自分中心で自分自身の過去を目いっぱいさらけ出す内容だったように思う。1年の月日を経て私が今年の毎日映コンの授賞式で感じたことは〝チーム〟という存在だ。中でも印象的だったのがTSUTAYA DISCAS映画ファン賞を受賞した「劇場版 美しい彼~eternal~」を代表して授賞式に参加した八木勇征さんの言葉だ。「個人としてではなくチームの代表としてこうしてこのトロフィーを頂けているなと思っている」と語ったその言葉は私にとってタイムリーに刺さる言葉だった。
 
映画作りもアイドル活動も似ていると思う。個人戦ではなく本質的にはチーム戦だ。それが評価されて初めて達成感を感じる。毎日映コンならではの特徴的な賞にも、それが表れていると思う。「スタッフ部門」で登壇した全員から感じたことは、映画作りにおいて脚本、撮影、美術、音楽、録音は裏方として〝支える〟側ではなく、すべての人が表舞台に立っていると感じた。役者含め全スタッフがその作品の「顔」だということだ。

撮影賞を受賞した鎌苅洋一さんの言葉が興味深かった。昨年、大きな事故にあった鎌苅さん。自分自身が実際に事故を経験したことにより「死」のリアルさを知ったという。今までは人が死んでいく物語をカメラマンとして技術的に撮影していたが、実際に自身が体験した事故でこれまで自分が人の不幸を作り上げてきたかもしれないという罪悪感を覚えたと語っている。「撮影者」という〝スタッフ〟と呼ばれる人の繊細な世界を一気にのぞき込んだ気持ちになった。鎌苅さんはその後、しばらくの休職期間を設けていると話していたが、映画はつくづく各人の人生と連動して作り上げられるものだと感じた。スタッフの経験、感性、その土台があってこその一つの作品であり、すべての人が自分の人生と向き合っている姿がかっこいい。鎌苅さんは、今回の毎日映コンで撮影賞を受賞したことにより再び新しい作品を作りたいと語っていた。私は次の作品が楽しみで仕方がない。
 
最初にも述べたように、映画作りとアイドル活動はとても似ている。何人もの集団が一つのパッケージとして存在している。その中でもちろん一人一人に役割があるわけで、自分に何が出来て何を求められているのかを常に考えなければならない。自分の立ち位置を把握し、極め続ける作業の繰り返しだ。その道を極め続ける毎日映コンの受賞者たちの言葉はどれもこれも私には重く突き刺さる言葉だった。「自分のグループ」と照らし合わせた時にまだまだできることがあるんじゃないかと尻をたたかれる気持ちになった。

グループが好きだから、メンバーが大好きだからこそ思えた感情にあふれていた。今年の毎日映画コンクールは、そんな自分のグループ活動への高揚感を更に高めてくれる時間であった。この気持ちがメンバーに伝わることを願って行動し続けたい。

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ライター
堀陽菜

堀陽菜

2003年3月5日、兵庫県生まれ。桜美林大学グローバルコミュミュニケーション学群中国語特別専修年。高校卒業までを関西で過ごし、大学入学と共に上京。22年3月よりガールズユニット「MerciMerci 」2期生として活動開始。
好きな映画は「すばらしき世界」「スピードレーサー」「ひとよ」。幼少期から兄の影響で色々な映画と出会い、映画鑑賞が趣味となる。特技は14年間続けた空手。

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