2021年に生誕90周年を迎えた高倉健は、昭和・平成にわたり205本の映画に出演しました。毎日新聞社は、3回忌の2016年から約2年全国10か所で追悼特別展「高倉健」を開催しました。その縁からひとシネマでは高倉健を次世代に語り継ぐ企画を随時掲載します。
Ken Takakura for the future generations.
神格化された高倉健より、健さんと慕われたあの姿を次世代に伝えられればと思っています。
2023.11.25
高倉健さんは私の「推し」。3人の曖昧な関係性自体が色気を帯びる。Z世代が見た高倉健「無宿」
去年の3月。2月16日に生誕91年を迎えた高倉健さんの作品「鉄道員」について記事を書いた。この記事は、私が初めてひとシネマに寄稿した記事だ。この時まで私は、恥ずかしながら高倉健さんが映画界にとってどれほど偉大な方なのか存じ上げなかった。初めての記事で高倉健さんについて書くというプレッシャーで、私は今まで生きてきた中でも五本の指に入るんではないかというほど猛勉強した(高倉健さんについて)。初めての記事が書き終わった頃には、私はもうすっかり高倉健さんのファンになってしまい、それからというもの「好きな男性のタイプは?」と聞かれたら「高倉健さん」と答えている。あまり同世代の人間にはしっくりこないようだが、ぜひしっくりきてほしい! しっくりきてほしいから、今日も私は高倉健さんについて語ろうと思う。
今回語る作品は「無宿 やどなし」。ロベール・アンリコ監督によるフランス映画「冒険者たち」をモチーフとした、高倉健さんと勝新太郎さんが共演した唯一の映画だ。刑務所で知り合った、ヤクザの錠吉とゴロつきの駒玄。2人は出所後、サキエという女性を女郎屋から助け出し、3人の宿無し旅が始まるという物語だ。
私の「推し」
「鉄道員」の記事にて、高倉健さんは私の「推し」というふうに書かせてもらったが、本当に沼なのだ。底なし沼だ。高倉健さんが演じる役は、高倉健さん本人の人柄がそのまま投影されたような、寡黙で不器用だが、深い愛と優しさを持つキャラクターが多い。現代で俗に言われる「沼男」とは、黒髪マッシュで、誰にでも優しいけど、その中途半端な優しさ故に多くの女性を恋煩わせているイメージがある。否、私にとっての沼男は高倉健さんなので、寡黙で、いつも相手にしてくれないけど、一度その笑顔と優しさを向けてくれたらもう最後。沼るところまで沼ってしまう。誰かに優しくすることに対して責任を持っているからこそ、誰にでも優しくするわけではない。だからこそ優しくされたい、彼にとってそんな相手になりたいと追いかけてしまうのだ。
笑顔がたまらない
「無宿 やどなし」では、影を背負っている悪い男で、目を離したら消えてしまいそうなはかなさのあるヤクザだが、駒玄とサキエに心を開いてくると見せる笑顔がたまらないのだ。タバコの火を逆さまに着けてしまい、サキエに指摘されて照れ隠ししているシーンは、「なにそれかわいい」と思わず口に出してしまった。なにそれ、なにそのギャップ、聞いてないんですけど。
曖昧な関係性自体が色気を帯びて
また、高倉健さんと勝新太郎さんとのケミストリーが最高なのだ。まさに月と太陽のような対比する個性を持った2人のキャラクター。目が覚めたらもう隣にいないタイプの錠吉と、賭け事にハマってお金を貸す羽目になるタイプの駒玄。正直、どっちも悪い男だ。付き合っても幸せになれないタイプの男だ。そう頭ではわかっていても好きになってしまうタイプの男だ。2人して沼。
この2人と旅を共にするサキエは、ぶんぶんと2人に振り回されている。しかし、それでもサキエは2人を慕って、どこまでも付いていく。この3人の曖昧な関係性自体が色気を帯びていて、見るものをドキドキさせるのだ。
そんな私の推しである高倉健さんの命日は11月10日。
高倉健さんが今まで出演してきた映画本数は、なんと205本になる。高倉健さんが出演した作品はどれも現代とは違った色気や武骨さが描かれている。今から推し活を始めても、いろいろな魅力をもつ高倉健さんに出会えるはずだ。ぜひ、時代を超えて令和から、伝説の役者・高倉健さんと、不朽の名作の数々を楽しんでみてはいかがだろうか?
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