誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。
2023.6.14
私たちのAIへの〝今の気持ち〟を確かめる、高校生になった「片翼の小さな飛行機」和合由依が見た「M3GAN/ミーガン」
「ミーガンダンス」をご存じの方はいらっしゃいますか? 赤い壁の廊下でミーガン(アミー・ドナルド)が奇妙なダンスを踊るのです。彼女は軟らかい体を使って変な動きをします。無表情な顔のまま踊るミーガンを見ると、悪い予感しかなくてたまりません。この映画が全米で大ヒットしているという情報が入ってきた時に、気になってネットで検索せざるをえませんでした。YouTubeに出てきた予告編に「ミーガンダンス」が収録されている動画を見て、どのタイミングでこれが出てくるのだろうと、ずっとソワソワしていました。そして、実際にスクリーンの中で踊る彼女を見て、「キタキタ! ミーガンダンス!」と、ひそかに興奮していました。あのシーンがたまらなく好きなのです。今までのホラー映画には無い怖さが詰まっています。本作は過去の作品には無い全く新しいホラー映画。ホラーというと現実には起こり得ない物語がほとんどですが、AI(人工知能)が取り入れられた「ミーガン」は現実に起こり得るかもしれない物語なのです。ホラーというジャンルでありながらも現実的なこの映画に私はひかれました。
AIならではの恐怖感が私たちに襲いかかる
「ミーガン」はホラー映画ですが、AI映画でもあります。AIは過去のデータを基に動くので、ある意味間違った行動は起こさない。けれども「感情」というものが無いが故に自分が起こす行動について、正しいかどうかを倫理的に判断することが不可能になる。この映画の怖さはここにあるのです。彼女が完璧すぎて怖い、私はそのように思うのです。AIならではの恐怖感が私たちに襲いかかります。
子どものおもちゃに命が宿った
本作の監督であるジェラルド・ジョンストンと、プロデューサーのジェームズ・ワンを中心に背筋が凍るほど恐ろしい存在となる人形を作るためには〝子どものおもちゃに命が宿った〟という設定が一番だという結論に至ったのだといいます。だからか、怖いだけじゃなくてかわいい一面も持っているミーガン。ケイディ(バイオレット・マッグロウ)と一緒に過ごしている時、彼女の口角は上がっていて声もやさしい。正直、私は無表情な様子もかわいいと思っています。無表情なのにもかかわらず美人さんでズルいな、なんて思ったりもします。また、一高校生からの視点だと、ニキビなどのできものが無いのもずるいと思えてしまったりします。
ですが、完璧な人間などいないのが私たちの良さでもあり、AIと私たち人間の大きな違いの一つです。また、人間には「感情」があるというのも大きく違う点です。
私たちのAIへの〝今の気持ち〟を確かめる
今の時代、日々の生活の中でAIに助けられている場面がいっぱいあります。例えば、私が使っているiPhoneは、「Hey Siri」と用件を伝えるために声をかけるだけで対応をしてくれます。また、このようなAIの活用はスマートフォンだけにとどまりません。あらゆる場所でAIは活用されているのです。もしかしたら今後、ミーガンのような人間の見た目をしたAIロボットが誕生するかもしれない。本作を見てからそんなことを考えると、好奇心よりも恐怖心が勝ってしまいます。でも、今話題のChatGPTなどのアプリに触れると、今後の未来が楽しみに思えて私はとてもワクワクした気持ちになります。今後、この世界がどんな進化をしていくのか楽しみです。私は進化に対応していける人間でありたいと思います。そんなことを考えさせてくれるというのは、私たちのAIへの〝今の気持ち〟を確かめきっかけになる良い映画だとも思いました。
母とたくさんのことを話した
最後に、この映画を鑑賞するときは自分の知り合いを誘って一緒に見にいくことをオススメします。なぜなら、「ミーガン」を見終えた時、あなたはきっと本作を知っている誰かと感情や考えを共有したくなると思うから。私も本作を見た後、家へ向かう帰りの車の中で、母とたくさんのことを話しました。
ホラーだけじゃない要素もたくさん詰まっているこの映画。今だからこそできた作品だと思います。奇妙かつ、恐怖が降り注ぐ「ミーガン」、現在公開中です。