音楽映画は魂の音楽祭である。そう定義してどしどし音楽映画取りあげていきます。夏だけでない、年中無休の音楽祭、シネマ・ソニックが始まります。
2024.3.26
バンドやアーティストは常に地元からバズを世界に発信し続けている「ダメな奴~ラッパー紅桜 刑務所からの再起~」
SNSが出てくる前、バンドやアーティストはその代わりを果たしていたと話していた人がいた。それは、地元に根を張り、何代にもわたってユニークな人々を輩出していく。古くは英リバプールのビートルズだったり、米ニューヨークのアンディー・ウォーホルだったり、福岡のめんたいロックだったり。地元のインフルエンサーから情報が発信され、それがバズり、多くの人に広がっていくのだ。
日本のラッパーがとうとうドームまで!
2000年代に入ってSNSが普及し、アーティストが地元のつながりも、マスメディアも、SNSもと縦横無尽に使って伝播(でんぱ)したのが、例えば今の日本のヒップホップムーブメントなのではないのだろうか? 先日行われた川崎出身BAD HOPの東京ドーム解散ライブは、日本のラッパーがとうとうドームまで来たか!と衝撃を与えた。
岡山県津山市
そのムーブメントの一人、紅桜は1987年岡山県津山市で生まれ育ち、地元の先輩YAS率いる「FAT BOX CREW」に触発されラップを始めたと言う。08年よりMCバトルに参戦。13年リリースしたシングル「Holare!!」の収録曲「What’s my name」でデビューした。やがて、歌謡曲や演歌の歌唱法を取り入れた独自のスタイルが人気を博していった。
再起を懸けた
19年そんな彼が突然表舞台から姿を消すことになる。覚醒剤取締法違反で逮捕、懲役のためである。このドキュメンタリー「ダメな奴~ラッパー紅桜 刑務所からの再起~」は23年、約4年の懲役を終えてから、再起を懸けた復活ライブまでの軌跡を追ったものである。刑務所の近くで出所を祝う仲間たち、地元榎地区、彼らが言うエノックリンまでの道程の涙、エノックリンの生活、地元のラッパーたち、スタジオ入り、復活ライブまで。仲間や家族といるダメな奴(やつ)こと紅桜の素顔がうかがえる。
地元からバズを世界に
ところで、ふと気になって津山市出身の著名人を検索してみた。古くはアナウンサーの押阪忍から作家の重松清、B'zの稲葉浩志、俳優のオダギリジョー、芸人の河本準一など個性あふれる才能を輩出している。隣の勝央町には初めて日本語ラップをヒットチャートに送り込んだスチャダラパーのBoseもいる。津山で前出のYASがレーベルParty Gun Paul(パーティガンポール)を立ち上げたことで地元から次々とラッパーが輩出されている。政治屋やビジネスマンが地方創生などと声を上げる前から、バンドやアーティストは常に地元からバズを世界に発信し続けているのである。そんなことを思わせるドキュメンタリーだった。
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