「キル・ボクスン」の一場面。 Noh Ju-han/Netflix © 2023

「キル・ボクスン」の一場面。 Noh Ju-han/Netflix © 2023

2023.3.10

チョン・ドヨン主演作から大ヒットミステリーの第2弾まで 3月配信オススメ作品5選:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

ひとしねま

須永貴子

「オンラインの森」筆者が持ち回りで、最新配信作品からオススメ作品をピックアップ。毎月10日に更新し、注目ポイントを解説します。ネクストブレークは、きっとここから!
 

チョン・ドヨンが初の本格的アクションで殺し屋役に「キル・ボクスン」

 「シークレット・サンシャイン」(2007年)でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞したチョン・ドヨンにとって初の本格的なアクション作品。2月に開催された第73回ベルリン映画祭でも公式上映された。
 
彼女が演じるキル・ボクスンは有能な殺し屋であり、15歳の娘(キム・シア)の子育てに奮闘するシングルマザー。娘には自身の職業をひた隠しにしており、ある仕事を最後に殺し屋稼業から足を洗おうとしていたが、雇い主のエージェントだけでなく殺し屋業界全体から狙われることに。
 
そこから連想する「ジョン・ウィック」のキアヌ・リースのように、襲いかかる敵との怒濤(どとう)のアクションがティーザーで確認できる。「彼女はどんなものでも凶器に変えてしまうスキルを持つ」という特が、作品における武器になるはず。
 
監督は「キングメーカー 大統領を作った男」「名もなき野良犬の輪舞」のピョン・ソンヒョン。「キングメーカー」で主演したファン・ジョンミンの使い所も楽しみだ。
 
「キル・ボクスン」
3月31日(金)よりNetflixにて独占配信開始
監督:ピョン・ソンヒョン
出演:チョン・ドヨン、キム・シア
 
 

Nattida-Jayne Kanyachalao / Caviar / Netflix

ベルギーの新鋭が描く心理スリラー「ノイズ・ウィズイン」

 まずはだまされたと思って予告映像を見てほしい。異様な緊張感と不穏さをたたえた音楽がとにかく最高! 軸になるのは、認知症になった父親の秘密を探るインフルエンサーのマット(ウォード・ケレマンス)が、次第に追い込まれていく様子。
 
そこに、のっぺらぼうの子どもの写真、一つ目のマスコット、廃工場、ケーキの断面から新鮮な血のように滴り落ちるフィリングなどのカットが挟まれていく。心理スリラー作品に必要なセンスをこれでもかと詰め込んだ、お手本のようなトレーラーだ。
 
監督は、ベルギーのステファン・ヒェイペンス。日本ではまだ作品が公開されたことがないが、過去作が世界中の映画祭で評価されている。心理スリラーにつきまとう〝肩透かし〟の可能性を覚悟しつつ、新たな才能との出会いに期待。
 
「ノイズ・ウィズイン」
3月17日(金)よりNetflixにて独占配信開始
監督:ステファン・ヒェイペンス
出演:ウォード・ケレマンス、サリー・ハルムセン、ヨハン・レイゼン
 

©2023 20th Century Studios, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute.

サウスロンドンのストリートが舞台のカラフルなロマコメ「ライレーン」

 舞台は南ロンドンのペッカム。ひどい失恋をした男女が偶然出い、一緒に過ごす1日を描くロマコメとのこと。タイトルは、実在するRye Laneというストリートの名称。
 
予告映像を見ると、2人がうろつくアートギャラリー、路上ミュージシャンのいるストリート、レコードショップ、カフェやナイトクラブといったロケ地を有する町自体がすでに生き生きとしていて魅力的だ。本作は、レイン・アレン・ミラー監督の初長編作。カラフルな色彩設計やカメラがとらえる構図にセンスを感じる。
 
「ライレーン」
3月31日(金)よりディズニープラスにて独占配信開始
監督:レイン・アレン・ミラー
出演:デビッド・ジョンソン、ビビアン・オパラ
 
 

過去の映像化作品との違いにも注目。宮部みゆき原作を台湾でドラマ化した「模倣犯」

宮部みゆきが2001年に発表した長編犯罪小説「模倣犯」が、1990年代後半の台北を舞台にした犯罪サスペンスドラマとして生まれ変わる。ストーリーの視点を担うのは、ウー・カンレンが演じる生真面目な検事。連続殺人事件の犯人が、マスコミを利用して大衆の関心を引き、一連の事件がショーのように仕立て上げられていく中で、検事がなんとしても事件を解決しようとするが‥‥‥。

日本では過去に映画化とドラマ化がされていて、犯人の「ピース」こと網川浩一を映画では中居正広が、ドラマでは坂口健太郎が演じている。予告映像では能面をかぶった犯人がカメラの向こう側から語りかける、劇場型犯罪ならではのシーンが映し出される。

まだ話数はオープンになっていないが、「最後の最後まで、誰が犯人かわからないところが、ジャンルシリーズの魅力です」「すべての登場人物が、見えない〝糸〟でつながっていて、そのつながりが、物語が進むにつれて明らかになります」という監督の言葉から、この台湾版のドラマシリーズが、最も原作に忠実な映像作品になる予感がする。クラブDJ役を演じるフェンディ・ファンの美形ぶりも目を引く。

「模倣犯」
3月31日(金)よりNetflixにて独占配信開始
監督:チャン・ロンジー、チャン・ハンルー
出演:ウー・カンレン、アリス・クー

 

アダム・サンドラー&ジェニファー・アニストン主演で大ヒットした続編もの「マーダー・ミステリー2」

 2019年に配信されたミステリー&コメディ映画「マーダー・ミステリー」の続編。前作で、クルーザー内で発生した億万長者殺人事件の解決に貢献した、ニューヨークの警官ニック(アダム・サンドラー)と、美容師でミステリー小説マニアのオードリー(ジェニファー・アニストン)のスピッツ夫妻。
 
その後、私立探偵事務所を立ち上げた2人は、前作で知り合ったマハラジャの結婚パーティーに招待される。マハラジャが所有する島(=密室状態)での絢爛(けんらん)豪華なパーティーの真っ最中に、マハラジャが誘拐され、2人は(オードリー憧れの)パリへ身代金を届けることに‥‥‥。
 
前作はNetflixのオリジナル映画として、配信開始から72時間で史上最高の視聴世帯数をたたき出した大ヒット作。今回も間違いなく視聴者数が見込めると踏んだのか、予告映像から伝わる作費の激増感! 爆破やカーチェイスなど迫力のアクションシーンはもちろん、マハラジャの新婦役にメラニー・ロラン、国際的な誘拐事件を捜査する刑事役にマーク・ストロングがふんするなどキャストも豪華。窮地に追い込まれてもシニカルなユーモアを忘れないスピッツ夫婦の活躍と、意外と緻密(ちみつ)な謎解きが楽しみだ。
 
「マーダー・ミステリー2」
3月31日(金)よりNetflixにて独占配信開始
監督:ジェレミー・ガレリック
出演:アダム・サンドラー、ジェニファー・アニストン


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ライター
ひとしねま

須永貴子

すなが・たかこ ライター。映画やドラマ、TVバラエティーをメインの領域に、インタビューや作品レビューを執筆。仕事以外で好きなものは、食、酒、旅、犬。

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