「ボレロ 永遠の旋律」

「ボレロ 永遠の旋律」©2023 CINÉ-@-CINÉFRANCE STUDIOS-F COMME FILM-SND-FRANCE 2 CINÉMA-ARTÉMIS PRODUCTIONS

2024.8.09

「ボレロ 永遠の旋律」 ラベルの人生と創作の秘密に迫る

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

1928年のパリ。スランプに陥っている作曲家のモーリス・ラベル(ラファエル・ペルソナ)は、ダンサーのイダ・ルビンシュタイン(ジャンヌ・バリバール)から、新作バレエの音楽を依頼される。

冒頭、ジャズやロック調などさまざまな演奏が流れることからも分かるように、「ボレロ」は世界中で愛されている。このクラシックの名曲はいかにして生まれたのか。「ココ・アヴァン・シャネル」など実話を基にした作品を手がけてきたアンヌ・フォンテーヌ監督が、時系列をパズルのように組み替えながら、ラベルの人生と苦しみのもとともなった創作の秘密に迫った。

工場の機械の規則的な音が、反復するリズムのインスピレーションの源になったエピソードなど、意外だが納得の誕生秘話も。監督はラベルを禁欲的な人としてではなく、性的に他者にひかれないアセクシュアルと捉え、エロチックな振り付けで踊ったイダとの衝突と和解も描き出した。最愛の母やピアノ奏者ら、女性たちとの関係が伝記をより豊かなものにしている。2時間1分。東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマほか。(細)

ここに注目

繰り返されるドラムのリズムと二つの旋律がもたらす陶酔感は、モーリス・ベジャールら多くの振付家にインスピレーションを与えてきたが、曲や踊りのイメージが強すぎた側面も。フォンテーヌ監督はラベルの人物像とともに、「ピアノ協奏曲」など、ボレロ以外の作品の美しさにも光を当てた。(倉)

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