チャートの裏側

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2025.3.07

チャートの裏側:現実とつながる異空間

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

今年の米アカデミー賞は地味に見えた。発表当日のテレビ、翌日の新聞の報道も、それほど大きくはなかった。発表を見越した作品の公開もあったが、興行のアカデミー賞効果は、作品賞をとった昨年の「オッペンハイマー」のような展開は難しいだろう。少し、様子を見よう。

チャートは、意外な作品が好位置を占めた。「知らないカノジョ」だ。パラレルワールド的な時間軸の中で恋愛模様を描く。作家志望と歌手志望の若い男女が主人公だ。スタート3日間の興行収入は、新作ではトップの1億6000万円。本作は、フジテレビが製作の一画を担う。

周知のとおり、同局の番組間に流れるCMは制限されている。そこで最近、同局関連のドラマや映画のスポットが増えた。「知らないカノジョ」も、その一本にあたる。認知度がある程度は広がったのだろう。主演の中島健人の人気もある。直接的な映像露出は、やはり大きい。

大ヒット中の「ファーストキス 1ST KISS」も、時空をまたぐ恋愛映画だ。2作品が上位を占めたのは偶然ではない。異空間で繰り広げられる恋愛模様の中に、観客の心を揺さぶるものがあるのだろう。一気呵成(かせい)に、ファンタジー世界に飛ぶのではない。現実と異空間がひとつながりになることで、生々しいリアルから距離をおく。アニメの世界に通じるものもある。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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