チャートの裏側

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2024.8.16

チャートの裏側:旋風起きない竜巻映画

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

1996年夏、竜巻の脅威を描く「ツイスター」が公開された。鳴り物入りのディザスター映画として、期待が高かった作品だ。米映画真骨頂の高度な技術力、洋画興行自体の好調さが背景にあったが、当初見込みを下回った。米映画の神通力に陰りが見え出した時期にもあたる。

一度あることは二度ある。早くも圏外の続編的な「ツイスターズ」がまた、厳しかった。興行収入で35億円は何とか超えた前作のレベルどころの話ではない。竜巻に関心が低いと言われればそれまでだが、ことはそれほど単純ではない。映画が群を抜く面白さをもっていたのだ。

話の組み立てが非常にいい。竜巻の中に入って花火を打ち上げたりする、お騒がせユーチューバー集団が、時代の闇をあぶり出す役回りである。これがリアルな現実社会を反映する。スペクタクル描写にとどまらない。技術力のインパクト低下を意識した作劇術の強化とみた。

同時に、こうも思った。この話の展開を面白がる人は、今の日本でどれほどいるのか。多いわけはないが、それでもある程度いてほしい。そのような考えが打ち砕かれていったのが、なかなか伸びない現状の興行というわけだ。上映回数も減っているが、せめて8月いっぱいは、見やすい時間帯の回をもう少し増やしてもらえないか。もはや、切なさ漂うお願いである。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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