チャートの裏側

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2024.8.02

チャートの裏側:炸裂するマーベル映画愛

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

面白い作品が登場した。「デッドプール&ウルヴァリン」だ。興味深いことに、今年公開された洋画の実写作品ではもっとも幸先のいい数字になった。最初の5日間の興行収入は8億円。20億円以上が視野に入り、前2作を上回ることも期待できる。面白さの広がり方しだいだ。

アメリカンコミックを原案とするマーベル映画の最新作にして、シリーズ3作目である。この3作目というのがミソである。前2作品は、ディズニー買収前の20世紀フォックスが製作した。買収から5年が過ぎ、「デッドプール」の新作がディズニー傘下で公開されたのだ。

その経緯そのものが、映画全体の話の基軸になっているのがユニーク極まる。デッドプールは異色のキャラクターで、マーベル映画の王道からはずれている。そのコンプレックスと、自身を生みっぱなしのフォックスへの恨みも交じる。その上で、マーベル映画愛が炸裂(さくれつ)する。

それは、マーベル映画を彩ってきた多くのキャラクターたちへの愛にも通じる。なかでも、資本系列が変わったフォックス関係のキャラクターへの愛には並々ならぬものがある。「&ウルヴァリン」の意味は深い。あまりに複雑に話が広がり過ぎた昨今のマーベル映画への批判的視座も見えた。正論である。ヒーロー映画の系譜に、一石を投じた作品だと言えようか。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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