ひとしねま

2024.7.05

チャートの裏側:90歳 みなぎる草笛光子

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

ここでは4位だが、平日はトップである。若者層の集客が多い土日より、年配者が主流な作品は平日が強い。「九十歳。何がめでたい」が好調だ。興行収入は10億円超えが見えてきた。「老後の資金がありません!」(約12億円)のヒットが記憶に新しい。重要な興行が続いている。

配給の松竹の富士山模様が出たあと、「草笛光子生誕90年記念映画」の文字が浮かぶ。ジーンとくる。同名のエッセーを書いた佐藤愛子が100歳、主人公の年齢設定が90歳、主演の草笛光子が90歳である。世界の映画史上、まれにみる作品の成り立ちだと言えよう。素晴らしい。

朝方、作家の佐藤愛子が目を覚ます。よぼよぼした様子で起き出し、郵便箱から何紙かの新聞を取り出しに行く。ここで、ハッとする。何紙も新聞を読む習慣を、90歳になっても続けているのだ。エッセーの執筆を引き受け活力を取り戻していくが、その際、新聞記事に大いに助けられることになる。

何も、作家だからというのではない。キーワードは、持続性、知識欲、やりがい、人との交流などの大切さだ。言葉にすればありきたりに見えるが、それらが、演じた草笛光子の全身にみなぎっていく。その底流には、彼女の張りのある声質がある。この声は映画が目指す希望のトーンそのものだ。だから、先のキーワードが観客に刺さる。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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