毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
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2025.3.07
「プレゼンス 存在」 幽霊の〝視線〟を映像化 のぞき見的スリルが加速する
多様な作風やテーマの作品を矢継ぎ早に手がけているスティーブン・ソダーバーグ監督が、意外にも幽霊屋敷もののホラー映画を撮った。何と幽霊の一人称視点で全編を物語るというユニークな試みである。
住宅街の空き家に親子4人の家族が引っ越してくる。思春期の娘クロエ(カリーナ・リャン)は親友を亡くした喪失感を引きずり、両親や兄もそれぞれ問題を抱えている。そんな一家の日常を見つめ続ける幽霊は、なぜこの家に存在するのか?
ソダーバーグ自身が変名で撮影監督を兼任し、ワンシーン・ワンカットの様式で幽霊の「視線」を映像化。幽霊は最後まで姿を見せず、ホラーとしての見せ場はポルターガイスト現象が時折起こる程度で、さして怖いわけではない。その半面、10代の若者たちの危うげな生態と、すれ違う家族の姿を捉えたのぞき見的な描写が効果的で、終盤はスリルが加速する。「ジュラシック・パーク」などのデビッド・コープが脚本を手がけ、低予算ながら技巧を凝らし、新味にあふれた一作となった。1時間24分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪ステーションシティシネマほか。(諭)
ここに注目
クローゼットの中や部屋の隅から遠慮がちにのぞき見する幽霊は、時々ちゃめっ気も見せながら、危なっかしいクロエをハラハラしながら見守る風情。広角レンズで出来事を映し取っているだけなのに、幽霊の感情めいたものまで漂わせるカメラワークと編集が秀逸だ。(勝)