私と映画館

私と映画館

2024.10.25

私と映画館:強烈に心に残る「ボレロ」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

絶対に映画館の大スクリーンで見るべし! そう思う作品がいくつかある。その一つが、クロード・ルルーシュ監督の「愛と哀しみのボレロ」(1981年)だ。作品との出合いは小学生だった89年1月、昭和天皇の崩御を受けてテレビは自粛モード。そんな時、母がレンタルビデオ店で借りてきた数本の映画の中にこの作品があった。

物語は第二次世界大戦を挟み、30~80年代のパリやベルリン、モスクワなどを舞台に、いくつもの家族の数奇な運命を世代を超えて描いている。親と子を同じ俳優が演じていたこともあり、正直、子どもには難しすぎる内容だった。だた、主要人物の一人を演じたジョルジュ・ドンが、ベジャール振り付けの「ボレロ」を踊るラストシーンは強烈に心に残っていた。

10年ほどたって、大学の授業でドンが踊る映像を見る機会があった。圧倒的な存在感に打ちのめされつつ、すぐに「あの映画の人だ」と気付いた。彼が20世紀を代表する天才バレエダンサーだと知り、その魅力にとりつかれ、「もう一度、映画を見なければ」と強い思いに駆られた。DVDを繰り返し見て、一度は満足した。でも、ドンの才能を受け止めるには不十分だった。リバイバル上映をスクリーンで初めて見て、そう思った。そこには、映画館で見るからこそ伝わる迫力が確かにあった。【倉田陶子】

関連記事

この記事の写真を見る

  • 私と映画館
さらに写真を見る(合計1枚)