私と映画館

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2024.12.27

私と映画館:「見る」から「遊ぶ」へ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

映画業界を取材して四半世紀、この間、映画館の大変革が3回あった。最初は1990年代末、シネマコンプレックス(複合型映画館)の上陸。きれいで見やすい施設がたちまち既存館を一掃。大手映画会社の系列ごとに上映作品を流通させる映画館チェーンは消滅し、没個性的で均一な施設に取って代わられた。

2000年代はデジタル化。当時「10年で完全移行」という言葉に「そんなバカな」と思ったが、その通りになった。映画のイメージは今でも、フィルムロールがある撮影カメラ、映写機、パーフォレーション(フィルムを送るための穴)付きフィルムの3点セットだが、実際の映画の現場には、もはやどれもほぼ存在していない。

あだ花だったのは立体(3D)化。奥行きもある映像で、新たな映画体験と業界は沸いた。しかし特殊な眼鏡をかけての鑑賞はなじまず、機運はすぐにしぼむ。ただ一方で、さらにその先、体感型の4DXやMX4D、大画面のIMAX、高音質のドルビーアトモスなどなど、新技術が次々登場。映画館が「映画を見る小屋」から「イベントを体験する場」になった。

1920~30年代に音と色がついて以来の変革期。失われたものも多いが、後戻りはあるまい。ただ「グッド・ストーリー・ウエル・トールド(良い物語を上手に語る)」という金科玉条だけは、変わらないと信じている。【勝田友巳】

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