「東京カウボーイ」

「東京カウボーイ」

2024.6.14

「東京カウボーイ」 モンタナ州の雄大な自然のなかで人生を見つめ直す

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

食品商社に勤めるヒデキ(井浦新)は上司で副社長のケイコ(藤谷文子)と婚約中。会社が米モンタナ州に所有する牧場が経営不振となり、ヒデキは牛を希少価値の高い和牛に切り替えれば再建できると訴え、和牛畜産の専門家のワダ(國村隼)と共に現地に向かう。ところが、米国の牧場では東京のビジネスの常識は通用せず、ヒデキはさまざまな苦難に直面する。

かつて日本に住み、「男はつらいよ」シリーズの製作にも携わったことのあるマーク・マリオットが監督し、藤谷が脚本も手掛けるだけに、日米の文化の違いなどの描写は正確で、そのズレがユーモアを生んでいる。頭でっかちで他者の気持ちをくむのが苦手なヒデキが日米の風土の違いにもまれながら徐々に変わっていく様はよく伝わってきたが、牧場で働く米国人たちや心配して渡米してきたケイコの気持ちの変化の描き方はやや性急で説得力を欠く感も。ただ、井浦と國村がコミュニケーション能力という点で圧倒的に対照的な2人の男をうまく演じていて、そこも楽しめる。1時間58分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開中。全国でも順次公開。(光)

ここに注目

牧場でもスーツに革靴の口先サラリーマンが、モンタナ州の自然の中で考えもいでたちも解放されていくという典型的な展開。意外性は乏しくても、脚本は要所を押さえて小気味よく進み、雄大な風景が気持ちいい。米国のインディペンデント映画だが、和風の味付けがほどよく利いて、ウェルメード。(勝)

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