チャートの裏側

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2025.3.14

チャートの裏側:女性たち高揚さす成長譚

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

映画を見る前、作品がパート1だということを、どれほどの人が知っていただろうか。「ウィキッド ふたりの魔女」である。本作は連続ものの前編にあたる。普通ならタイトルにパート1が入るはずだが、なかった。本編の原題「Wicked」に、「PART ONE」はついていない。

単純に、原題を踏襲しつつ、副題もつけたということだろうか。はたまた、別の理由、思惑があったか。ここまで、タイトルにこだわるのには理由がある。連続ものという予備情報がある場合とない場合で、見た印象が違う気がするからだ。ところが、この詮索は杞憂(きゆう)だった。

映画館関係者に聞くと、観客の満足度がかなり高い。パート1という情報があるなしに関わらず、存分に楽しめる作品のようだった。数字が明らかだ。最初の3日間の興行収入は5億2000万円。何と、昨年以降の洋画の実写作品では最高スタートという。春興行を走るだろう。

最近の洋画では珍しく、女性層に広がりを見せている。エンタメ大作にありがちなビジュアル面全開の押しつけがない。「ふたり」の成長譚(たん)的な話の足場が強固にあるから、女性たちは気持ちを高ぶらせるのではないか。前編だから、全貌は見えないが、そこを乗り越えた手応えがある。「ふたり」は、どう変貌するのか。そこに集中できるから、映画は成功である。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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