「ウーマン・トーキング 私たちの選択」 ©2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved.

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2023.6.02

「ウーマン・トーキング 私たちの選択」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

キリスト教の一派が自給自足で生活する村。連続レイプ事件が起きるが、男たちは「悪魔の仕業」などと否定する。女たちは実際の犯罪だと気づき、男たちが不在の間に納屋に集い、とどまって戦うか、出ていくか、議論を交わす。ボリビアで実際に起きた事件を基につづられた小説を、サラ・ポーリーが映画化。2023年のアカデミー賞脚色賞を受賞した。

学びを奪われた質素な暮らしぶりから過去の話かと思いきや、鮮やかに覆される瞬間の衝撃。その転換によってポーリーは、抑圧された女たちの叫びがこの時代にも存在していると、知的に、力強く訴えてみせた。

信仰と現実の間で揺れ動きながら、怒りや悲しみ、諦め、異なる意見を率直にぶつけ合い、彼女たちは限られた時間で対話を続けて、少しずつ連帯していく。ルーニー・マーラ、クレア・フォイら実力派俳優が、硬質な会話劇に温度をもたらした。シンプルな舞台設定だけに、彩度を落とした陰影豊かな映像や、納屋に差し込む光も大きな意味を持つ。1時間44分。東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマほか。(細)

ここに注目

見終わってすぐにもう一度見たくなった。脚本が練られていて、話し合う言葉の一つ一つが深くて普遍的だからだ。といって、こむずかしいとかフェミニズムとかにとらわれる必要もない。対立もユーモアも生き方も、女たちを取り巻く多様な事柄がフレームの中にあふれている。男性もぜひ、の一級品。(鈴)