「世界は僕らに気づかない」©Soichiro Suizu

「世界は僕らに気づかない」©Soichiro Suizu

2023.12.24

日本映画に感じた「物作り」の力 洪相鉉

2023年も、たくさんの映画や配信作品が公開されました。とても見切れなかった!とうれしい悲鳴も聞こえてきそうです。「ひとシネマ」執筆陣が今年の10本と、来る24年の期待作3本を選びました。年末年始の鑑賞ガイドとしてもご利用ください。

洪相鉉

洪相鉉

ゆく年編


「世界は僕らに気づかない」(飯塚花笑監督)
「ひとりぼっちじゃない」(伊藤ちひろ監督)
「Single8」(小中和哉監督)
「東京組曲2020」(三島有紀子監督)
「キングダム 運命の炎」(佐藤信介監督)
「リボルバー・リリー」(行定勲監督)
「福田村事件」(森達也監督)
「BAD LANDS バッド・ランズ」(原田眞人監督)
「鯨の骨」(大江崇允監督)
「法廷遊戯」(深川栄洋監督)

情熱と才能にリスペクト

「物作り」という日本語を考える。英語の「インダストリアルㆍエンジニアリング」と区別されるのは、「相手」を意識しないからであろう。自らの厳格な絶対基準を決めて精進してきた結果、今のこの国は世界を驚かせる競争力を確保するに至ったのだ。今年の日本映画を説明するために、これ以上のロジックがあるのか。

「映画が内需市場ばかり見ている」ということは、「ターゲットだけを変更すればいくらでも創作が可能な力量を持っている」という意味でもある。自分との闘いがコンテンツの豊かさと完成度を生み出している業界。配信の台頭による劇場の危機、大作の相次ぐ興行的失敗や公開本数の激減で脅かされる世界の現状に比べ、相変わらず映画が作りたくて仕方がない才能のある人々であふれる日本映画界は、筆者から果てしないリスペクトを引き出す。

くる年編




「彼方のうた」(杉田協士監督) 1月5日公開
「熱のあとに」(山本英監督) 2月2日公開
「霧の淵」(村瀬大智監督) 4月公開
 

ミニシアターの至福

今の時代、まさに「世界アートフィルムの生産と消費の場」に位置づけられているミニシアターの存在は、日本映画界の至福であり誇りである。そんなミニシアターにベネチア、釜山、サンセバスチャンなどの国際映画祭で観客に絶賛された3本の傑作がラインアップされているのを知るだけでも、胸がいっぱいになる2024年である。

【ひとシネマ的 ゆく年くる年 総まくり2023年】
人生の苦難、心の闇……〝痛み〟引きずった作品たち SYO
面白い作品を満喫 悔いなき1年 高橋佑弥
やっと戻った日常 心の琴線に触れた10本 後藤恵子

ライター
洪相鉉

洪相鉉

ほん・さんひょん 韓国映画専門ウェブメディア「CoAR」運営委員。全州国際映画祭ㆍ富川国際ファンタスティック映画祭アドバイザー、高崎映画祭シニアプロデューサー。TBS主催DigCon6 Asia審査員。政治学と映像芸術学の修士学位を持ち、東京大留学。パリ経済学校と共同プロジェクトを行った清水研究室所属。「CoAR」で連載中の日本映画人インタビューは韓国トップクラスの人気を誇る。