Ali Abbasi
映画監督「マザーズ」(2016年)「ボーダー 二つの世界」(2018年)「聖地には蜘蛛が巣を張る」(2022年)「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」(2024年)
イラン第二の都市マシュハドで、2000年代初頭に実際に起きた娼婦(しょうふ)連続殺人事件を基にしたこの映画は、事件を追うジャーナリストのラヒミと、犯人の2人を中心に描かれます。 「街を浄化する」という動機から犯行を繰り返す犯人は16人もの女性を殺し、その度に死体の遺棄場所を通報します。自分の使命であり、正義として殺人を犯しているのです。事実、彼の行動に対して熱狂的に支持する人たちも多く現れます。そして、そのような〝民意〟を考える立場の人たちは、事件を覆い隠そうとする見えない圧力となり、ラヒミを追い詰めていきます。 良い父であり夫でもある犯人が殺人を重ねることに恐怖を覚えますが、何より戦慄(...
英月
2023.4.24
「ゲット・アウト」「ニューオーダー」など、ジャンル映画にメッセージを託した秀作が続く。本作は「ボーダー 二つの世界」でファンタジー調のホラーに差別を描いたイラン出身のアリ・アッバシ監督による、実話を基にしたスリラー。女性主人公に迫る恐怖と息詰まる緊迫感で物語に引き込みつつ、イスラム社会の男性支配の罪深さを暴く。 イラン・マシュハドで売春婦の連続殺人事件が発生、テヘランから女性記者ラヒミ(ザーラ・アミール・エブラヒミ)が取材に訪れる。犯人はスパイダー・キラーと呼ばれ、犯行ごとに地元男性記者のシャリフィ(アラシュ・アシュティアニ)に電話をかけ、イスラム教の教えに従って町を浄化していると主張してい...
2023.4.14
まだ駆け出しのドナルド・トランプが、ニューヨークで始めた不動産業で大成功を収めるまでの軌跡を描く伝記ドラマ。監督は、「ボーダー 二つの世界」(2018年)や「聖地には蜘蛛が巣を張る」(22年)を手がけたアリ・アッバシ。長年トランプ前大統領を取材してきた政治ジャーナリストのガブリエル・シャーマンが脚本を担当している。若きドナルド・トランプを演じたのは、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」(14年)でバッキー・バーンズ を演じたセバスチャン・スタン。弁護士ロイ・コーンを、「ジェントルメン」(19年)への出演や「民衆の敵」で2024年のトニー賞演劇主演男優賞に輝いたジェレミー・ストロング...
「ボーダー 二つの世界」のアリ・アッバシ監督の最新作。2000年~2001年にイランの聖地マシュハドで殺人鬼〝スパイダー・キラー〟が16人の娼婦を殺害した実際の連続殺人事件を元に、15年の構想を経て描いた。本作で、第75回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞。 2001年、「街を浄化する」という犯行声明のもと、聖地マシュハドで娼婦を殺害し続ける〝スパイダー・キラー〟。殺人鬼に街は震撼しながらも、一部の市民は、 歪んだ「正義」に賛同し、 犯人を英雄視し始める。女性ジャーナリストのラヒミは、事件を覆い隠そうとする不穏な圧力を感じながら、危険を顧みずに事件を追う。ある夜、彼女は家族と平凡に暮らす一人の男・...