価値観を押しつける恐怖 「聖地には蜘蛛が巣を張る」:英月の極楽シネマ
イラン第二の都市マシュハドで、2000年代初頭に実際に起きた娼婦(しょうふ)連続殺人事件を基にしたこの映画は、事件を追うジャーナリストのラヒミと、犯人の2人を中心に描かれます。 「街を浄化する」という動機から犯行を繰り返す犯人は16人もの女性を殺し、その度に死体の遺棄場所を通報します。自分の使命であり、正義として殺人を犯しているのです。事実、彼の行動に対して熱狂的に支持する人たちも多く現れます。そして、そのような〝民意〟を考える立場の人たちは、事件を覆い隠そうとする見えない圧力となり、ラヒミを追い詰めていきます。 良い父であり夫でもある犯人が殺人を重ねることに恐怖を覚えますが、何より戦慄(...
英月
2023.4.24