Zar Amir Ebrahimi
1981年7月08日 生まれ
第36回東京国際映画祭(10月23日~11月1日)は、アジア映画の勢いをひしひしと感じさせる結果となった。受賞作は、最高賞の東京グランプリに選ばれた中国映画「雪豹」をはじめ、アジア映画がずらり。経済成長に伴って実力をつけてきた地域が、映画界でも台頭している。「アジア重視」を掲げながら苦戦が続いてきた東京に、追い風が吹いてきたようだ。 コンペティション部門の主要6賞のうち、中国映画が2本、イラン、日本が1本ずつ。残りはジョージアと米国の合作だが、イラン人が主人公。審査委員長のビム・ベンダース監督は「偶然ではない」と断じた。審査では映画や作り手の国籍は考慮せず作品本位だったというが、終わってみ...
勝田友巳
2023.11.06
「ゲット・アウト」「ニューオーダー」など、ジャンル映画にメッセージを託した秀作が続く。本作は「ボーダー 二つの世界」でファンタジー調のホラーに差別を描いたイラン出身のアリ・アッバシ監督による、実話を基にしたスリラー。女性主人公に迫る恐怖と息詰まる緊迫感で物語に引き込みつつ、イスラム社会の男性支配の罪深さを暴く。 イラン・マシュハドで売春婦の連続殺人事件が発生、テヘランから女性記者ラヒミ(ザーラ・アミール・エブラヒミ)が取材に訪れる。犯人はスパイダー・キラーと呼ばれ、犯行ごとに地元男性記者のシャリフィ(アラシュ・アシュティアニ)に電話をかけ、イスラム教の教えに従って町を浄化していると主張してい...
2023.4.14
雪に覆われた極寒のイタリアン・アルプスを舞台に、自由を求める亡命者の行く手を阻む大自然の脅威と不寛容な人間たちの狂気を描くサスペンススリラー。主人公の亡命を求めてフランスを目指すアフガニスタン女性チェレーに、自らもイランからフランスに亡命し、「聖地には蜘蛛が巣を張る」(2022年)で第75回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したザーラ・アミール・エブラヒミ。チェレーに手を貸す男性サミュエルを「苦い涙」「理想郷」(ともに22年)などの名優ドゥニ・メノーシェが演じる。そのほか、「シャトーブリアンからの手紙」(11年)のビクトワール・デュボワ、「僕のスウィング」(02年)のオスカー・コップ、ドラマ「ウィー...
「聖地には蜘蛛が巣を張る」(2022年)でカンヌ映画祭最優秀女優賞を受賞したザーラ・アミール・エブラヒミの監督デビュー作。イスラエル選手との対戦を避けるため、イラン政府から棄権を強要された女子柔道選手とコーチとの葛藤を描く。 東京国際映画祭2023コンペティション部門出品作。 ©Juda Khatia Psuturi
「ボーダー 二つの世界」のアリ・アッバシ監督の最新作。2000年~2001年にイランの聖地マシュハドで殺人鬼〝スパイダー・キラー〟が16人の娼婦を殺害した実際の連続殺人事件を元に、15年の構想を経て描いた。本作で、第75回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞。 2001年、「街を浄化する」という犯行声明のもと、聖地マシュハドで娼婦を殺害し続ける〝スパイダー・キラー〟。殺人鬼に街は震撼しながらも、一部の市民は、 歪んだ「正義」に賛同し、 犯人を英雄視し始める。女性ジャーナリストのラヒミは、事件を覆い隠そうとする不穏な圧力を感じながら、危険を顧みずに事件を追う。ある夜、彼女は家族と平凡に暮らす一人の男・...