ささべ きよし
1958年1月07日 生まれ
映画監督「半落ち」(2004年)「ツレがうつになりまして。」(2011年)「大綱引の恋」(2020年)
コンテンツ産業を国家戦略産業に育成し、2027年に世界4大コンテンツ強国に跳躍するという政府の発表。このため、映像コンテンツ産業の規模を27年までに約4兆4000億円以上に拡大し、キラーコンテンツの創出のため、28年までに1100億円以上の戦略ファンドを新設し、エミー賞、アカデミー賞など主要海外授賞式の受賞作を5年間で5本創出すると韓国文化体育観光省が発表した。昨年11月14日、ソウルのモドゥ芸術劇場で発表した映像産業跳躍戦略の内容である。就任後初の政策発表に乗り出したのは大臣の柳仁村(ユ・インチョン)で、筆者の先輩であり恩師でもある。彼とはただこの関係性だけでは説明が足りない縁がある。 ...
洪相鉉
2024.11.15
鑑賞のきっかけは「アイミタガイ」 寺尾聰さん演じる妻を殺した警部・梶聡一郎が自首するところから物語は始まる。妻はアルツハイマー病を患っており、彼女に懇願され殺したというのだ。しかし、犯行後自首までの空白の2日間について彼は何も語ろうとしない。日本警察の根幹を揺るがす大事件と世間で騒がれるなか、混乱する警察内部や報道するマスコミ関係者の心情をたどりながら、事件の謎は思わぬ方向へ解き明かされていく……。 2004年公開の作品。もう20年前だ。かなり話題になっていたという事実だけおぼろげに記憶しているが、当時小学生だったこともあり、劇場に足を運ぶことはなく、未鑑賞だった。しかし、公開中の映画「...
今泉マヤ
2024.11.03
アイミタガイ、なかなか聞き慣れない言葉だと思う。私も鑑賞するまで意味を知らなかった。漢字にすると「相身互い」。同じ境遇のもの同士が同情し助けあうという意味の言葉だ。因果応報、輪廻(りんね)転生……まったく意味は異なるが、なんとなく類似しているような、仏教的な言葉だと感じた。アイミタガイ、アイミタガイ……唱えてみるとお経のような不思議な響きの言葉だとも思う。 タイトルはさておき。黒木華さん演じるウエディングプランナーの主人公 梓(あずさ)は中村蒼さん演じる交際相手の澄人(すみと)との結婚に踏み切れずにいる。そんななか藤間爽子さん演じる中学時代からの親友の叶海(かなみ)が事故で命を落としてしまう...
2024.10.26
鳶(とび)の跡取り武志(三浦貴大)と韓国人研修医ジヒョン(知英)は、ある事件で出会い互いに好意を寄せ合う。その頃、武志の家では母(石野真子)が定年退職を宣言して家事を放棄、妹(比嘉愛未)や父らが頭を悩ませていた。鹿児島県薩摩川内市で420年続く「川内大綱引」を背景にしたラブストーリーで、佐々部清監督の遺作になった。 「チルソクの夏」「半落ち」「夕凪の街 桜の国」など市井の人々が懸命に生きる姿、男女や夫婦、家族の深い愛を丁寧に分かりやすく描いてきた佐々部監督らしさが十二分に発揮された。職人監督として多くのスタッフ、キャストから慕われた敬意と熱気がスクリーンから伝わってくる。とりわけ、地元に密着...
2021.5.06
現役警察官がアルツハイマー病の妻を殺した。自首した警部・梶聡一郎は彼女に懇願され殺したという。しかし、犯行後自首までの空白の2日間について彼は何も語ろうとしない。
原作は、2014年に斎藤緑雨文化賞長編小説賞を受賞した中條ていによる短編連作集「アイミタガイ」。「台風家族」(2019年)の市井昌秀監督が脚本の骨組みを作り、「ツレがうつになりまして。」(11年)の故・佐々部清監督の企画を受け継いだ「彼女が好きなものは」(21年)やドラマ「こっち向いてよ向井くん」などを手がけた草野翔吾監督が一本の映画にした。かけがえのない存在だった親友を失い、立ち止まってしまった主人公・梓を中心に思いがけない出会いが連鎖し、大きな輪になっていく群像劇。人との繋がりが希薄になってしまった現代に、誰の胸にも眠っている〝相身互い(アイミタガイ)〟という助け合いの心を呼び起こす。 ...