Michel Franco
1979年8月27日 生まれ
映画監督、脚本家「或る終焉」(2015年)監督・脚本・製作「ニューオーダー」(2020年)監督・脚本・製作・編集「あの歌を憶えている」(2023年)
ミヒャエル・ハネケとかラース・フォン・トリアーとかの映画に、こんなものを見せて何が言いたいのか、と怒る人にはお勧めしない。ピエル・パオロ・パゾリーニの映画を見て、不愉快だと感じる人もやめた方がいい。でも、そんな監督たちが好き、後味の悪さも味のウチ、真実は苦いと心得る人に、「ニューオーダー」は絶対受ける。いま挙げた監督を知らないという人たちも、物は試しでぜひどうぞ。ただし、それなりの心構えをしたうえで。こんな映画を上映してくれるからこそ、ミニシアターに感謝したい。 格差社会の果てに待つディストピアの苦い真実 ディストピア映画は数あれど、これは強烈。予想を裏切られっぱなし。しか...
勝田友巳
2022.6.04
警告。この映画に善意や救いを期待すると痛い目に遭う。強毒性の劇薬だが、その衝撃に耐えられれば人間や社会への冷徹な洞察にうなること請け合いだ。「或(あ)る終焉(しゅうえん)」「母という名の女」などのミシェル・フランコ監督が、人間社会の本性を暴き出す。格差社会への不満と怒りが臨界点を迎えるとどうなるか。暴力と混乱の果てに築かれるディストピアから、目を離せない。 抗議デモが暴動に発展し、町は大混乱に陥っている。一方、警備員に守られた豪邸に名士が集まり、マリアン(ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド)の結婚パーティーが開かれていた。高い塀に隔てられた別世界は、塀を乗り越えた暴徒によってたちまち崩壊。倫理...
2022.6.03
若年性認知症に罹って大切な記憶を失っていく男と、忘れてしまいたい過去を抱えた女が出会い、新たな人生と希望を見つけていくヒューマンドラマ。監督・脚本は、「或る終焉」(2015年)や「ニューオーダー」(20年)のミシェル・フランコ。主人公のシングルマザーでソーシャルワーカーのシルヴィア役は、「タミー・フェイの瞳」(21年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したジェシカ・チャステイン。若年性認知症を抱えるソールを演じたピーター・サースガードは、本作で第80回ベネチア国際映画祭にて最優秀男優賞を獲得した。 ソーシャルワーカーとして働き、13歳の娘とニューヨークで暮らすシルヴィアが、高校の同窓会で若年性認...
格差社会に対する抗議デモが暴動と化し、結婚式が開かれていたマリアンの家に暴徒が現れて、虐殺と略奪が始まる。マリアンは難を逃れたが、軍に拘束されて監禁されてしまう。軍は暴徒を武力で鎮圧し、戒厳令を敷いた。混乱した社会の悪夢的状況を描く。ベネチア国際映画祭審査員大賞を受賞。