Michel Franco
1979年8月27日 生まれ
映画監督、脚本家「或る終焉」(2015年)監督・脚本・製作「ニューオーダー」(2020年)監督・脚本・製作・編集「あの歌を憶えている」(2023年)
「或る終焉」(2015年)、「ニューオーダー」(20年)など、カンヌやベネチア国際映画祭などでの受賞が続く、メキシコのミシェル・フランコ監督。新作の「あの歌を憶えている」はラブストーリーだ。といっても、はじけるような若い男女のラブではなく、葛藤と失敗を繰り返す中年男女のたどたどしい愛に目を向けた。フランコ監督は「社会の隙間(すきま)に落ち、しがらみを抱えた人たちの生き生きとした愛の物語を作りたかった」と話した。 依存症の女と若年性認知症の男 ソーシャルワーカーのシルビア(ジェシカ・チャステイン)は、かつてアルコール依存症だったが断酒会に通いほぼ克服。ニューヨークで13歳の娘アナと...
鈴木隆
2025.2.26
断酒会に通いながらソーシャルワーカーとして働き、ひとり娘を育てているシングルマザーのシルビア(ジェシカ・チャステイン)。高校の同窓会で出会った、若年性認知症を患うソール(ピーター・サースガード)の面倒を見ることになる。シルビアは彼と過ごす時間に安らぎを感じるようになるが、あるトラウマを抱えていた。 「或(あ)る終焉(しゅうえん)」などで知られるメキシコ人監督、ミシェル・フランコのもとで実力派のハリウッドスターが共演。記憶を消したい女と記憶を失う男が、今この瞬間をいとおしむようになっていく過程を繊細に体現している。なぜシルビアが他者と関わらず、殻に閉じこもるように生きているのか。過酷な過去が明...
2025.2.21
ミヒャエル・ハネケとかラース・フォン・トリアーとかの映画に、こんなものを見せて何が言いたいのか、と怒る人にはお勧めしない。ピエル・パオロ・パゾリーニの映画を見て、不愉快だと感じる人もやめた方がいい。でも、そんな監督たちが好き、後味の悪さも味のウチ、真実は苦いと心得る人に、「ニューオーダー」は絶対受ける。いま挙げた監督を知らないという人たちも、物は試しでぜひどうぞ。ただし、それなりの心構えをしたうえで。こんな映画を上映してくれるからこそ、ミニシアターに感謝したい。 格差社会の果てに待つディストピアの苦い真実 ディストピア映画は数あれど、これは強烈。予想を裏切られっぱなし。しか...
勝田友巳
2022.6.04
5年で日本を3000キロ縦断 東北の震災で家族を失ったジャーマンシェパード犬の多聞(たもん)は、離れ離れになった大切な人に会うため5年の歳月をかけて日本を3000キロ縦断する。その途中で出会った人々は多聞と過ごす時間のなかで心が癒やされ人生に希望を見いだしていく。人と人とをつなげながら旅する多聞はどこへ向かっているのか――。 「ラーゲリより愛を込めて」にもクロという犬が 瀬々敬久監督、林民夫脚本と言えば「ラーゲリより愛を込めて」が記憶に新しい。戦後10年、ラーゲリ(収容所)で強制的に働かされた日本人たち。この生活はいつまで続くのか、果たして祖国に帰れる日は来るのか……と希望を見い...
PR東宝
2025.3.10
警告。この映画に善意や救いを期待すると痛い目に遭う。強毒性の劇薬だが、その衝撃に耐えられれば人間や社会への冷徹な洞察にうなること請け合いだ。「或(あ)る終焉(しゅうえん)」「母という名の女」などのミシェル・フランコ監督が、人間社会の本性を暴き出す。格差社会への不満と怒りが臨界点を迎えるとどうなるか。暴力と混乱の果てに築かれるディストピアから、目を離せない。 抗議デモが暴動に発展し、町は大混乱に陥っている。一方、警備員に守られた豪邸に名士が集まり、マリアン(ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド)の結婚パーティーが開かれていた。高い塀に隔てられた別世界は、塀を乗り越えた暴徒によってたちまち崩壊。倫理...
2022.6.03
若年性認知症に罹って大切な記憶を失っていく男と、忘れてしまいたい過去を抱えた女が出会い、新たな人生と希望を見つけていくヒューマンドラマ。監督・脚本は、「或る終焉」(2015年)や「ニューオーダー」(20年)のミシェル・フランコ。主人公のシングルマザーでソーシャルワーカーのシルヴィア役は、「タミー・フェイの瞳」(21年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したジェシカ・チャステイン。若年性認知症を抱えるソールを演じたピーター・サースガードは、本作で第80回ベネチア国際映画祭にて最優秀男優賞を獲得した。 ソーシャルワーカーとして働き、13歳の娘とニューヨークで暮らすシルヴィアが、高校の同窓会で若年性認...
格差社会に対する抗議デモが暴動と化し、結婚式が開かれていたマリアンの家に暴徒が現れて、虐殺と略奪が始まる。マリアンは難を逃れたが、軍に拘束されて監禁されてしまう。軍は暴徒を武力で鎮圧し、戒厳令を敷いた。混乱した社会の悪夢的状況を描く。ベネチア国際映画祭審査員大賞を受賞。