よくばり映画鑑賞術:黒澤明VS森田芳光 二つの「椿三十郎」を比較する
織田裕二はなぜ門番を斬り殺さなかったのか 黒澤明の「椿三十郎」(1962年)には森田芳光によるリメーク版(織田裕二主演、2007年)が存在している。せっかくなので二つのバージョンを比較してみようと思う。 森田芳光は「家族ゲーム」(83年)や「失楽園」(97年)、「模倣犯」(02年)などの話題作・ヒット作を多数手がけているベテラン監督である。「偉大な」黒澤映画をリメークするにあたって、森田はどのような戦略をとったのか。それを考えるのもまた本連載が掲げる「よくばり」のひとつの形である。 45年の時を隔てたリメーク 私は大学で映画論の授業を担当しているが、毎年、最初の回で「椿三十郎」...
伊藤弘了
2022.5.03