「正欲」 繊細な語り口で多様性の意味を問い直す
広島のショッピングモールで働きながら鬱屈した日々を送る夏月(新垣結衣)と、彼女の中学時代の同級生、佳道(磯村勇斗)。大学のダンスサークルでひときわ輝く大也(佐藤寛太)と、彼に引かれる八重子(東野絢香)。他人には言えない秘密を抱えた4人と、息子の不登校に悩む横浜在住の検事、寺井(稲垣吾郎)の人生が思いがけない形で交錯していく。朝井リョウの同名小説の映画化だ。 テーマは今どきはやりの〝多様性〟だが、ポリコレ的正論を叫ぶ映画ではまったくない。特異な性的嗜好(しこう)やトラウマゆえに世界から孤立し、息を潜めるように本来の自分を覆い隠す人々の生きづらさをあぶり出す。フェティシズムの領域にも触れた実にき...