「画家ボナール ピエールとマルト」 夫妻の愛の深淵に見る者を誘う
何気ない日常を色彩巧みに描いたフランスの画家、ピエール・ボナール(1867~1947年)。印象派に続くナビ派の代表格で、浮世絵などから影響を受けた画風でも知られる。生涯で描いた約2000点のうち、3分の1が伴侶マルトの姿だ。 実話に基づく映画は1893年、ボナール(バンサン・マケーニュ)が謎めいて型破りなマルト(セシル・ドゥ・フランス)にひかれ、同せいするところから始まる。彼女をモデルにした赤裸々な絵画は展覧会で高く評価されるが、2人の関係と愛はエゴや虚言、精神の不調などを伴い、緊張感を帯びていく。 印象的なのは、まずボナールの絵が現れ、そこから室内の背景に移っていく視線の移動だ。2人が暮...