この1本:「アフター・ヤン」 AIの目に映った情感
画面の隅々まで作り込まれ、余計な物が一切映っていない。「コロンバス」のコゴナダ監督は、その美意識を突き詰めたような端正な映像の中に、人間存在の本質を探究していく。 人間そっくりのロボットが普及した近未来。茶葉店を営むジェイク(コリン・ファレル)の家にもヤン(ジャスティン・H・ミン)がいて、中国系の養女ミカの教育係を務めていた。ところがある日、ヤンが突然動かなくなって、ジェイクは修理してくれる技術者を探すことになる。 話しているのは英語だが、画面は米国らしくない。淡い色調、東洋風の衣服、ジェイクがいれるお茶。俳優たちの表情は乏しく、セリフ回しもささやくようだ。小津安二郎監督を敬愛するコゴナダ...