第29回プサン国際映画祭で「劇映画 孤独のグルメ」を世界初披露し、舞台あいさつで、サプライズ登壇したユ・ジェミョンと松重豊

第29回プサン国際映画祭で「劇映画 孤独のグルメ」を世界初披露し、舞台あいさつで、サプライズ登壇したユ・ジェミョンと松重豊©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会

2024.10.07

「孤独のグルメ」大人気 松重豊「東アジア連帯のためなら人生ささげます」 プサン国際映画祭

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ひとしねま

磯崎由美

ホンパブ(一人飯)のイメージを変えた「ゴローサン」が韓国にやってきた――。韓国・プサンで開催中の第29回プサン国際映画祭で3日にワールドプレミア上映された日本映画「劇映画 孤独のグルメ」。ドラマ作品で主人公・井之頭五郎を演じてきた松重豊は初の映画化で監督、脚本と1人3役を務めた。「コケたら次はない」と覚悟を口にしていたが、現地での注目度は高く、荒天下の野外上映にもかかわらず5000席はほぼ満席。上映後、「予想以上の反応。いいスタートを切れた」と手応えを語った。

五郎が世界を駆け回る

輸入雑貨商を営む五郎が実在する各地の飲食店でさまざまなメニューを味わうドラマ作品について、松重は「半分ドキュメンタリーのようなもの」と表現する。ドラマでは多くの時間を店内で過ごす五郎が、スクリーンの中では実にアクティブだ。

ある老人の記憶に残る故郷のスープを探し求め、フランス、韓国、日本を駆け回り、人と人、味と味をつないでいく。ドラマの持ち味である五郎の食べっぷりは存分に発揮しつつ、随所にユーモアのスパイスが効いた温かなヒューマンドラマに仕上がった。

客席からは何度も笑いが上がり、絶品メニューが大映しになるたびにため息も。上映後は拍手と歓声が湧き起こり、感極まった松重も声を張り上げて感謝を伝えた。「カムサハムニダ!」


「劇映画 孤独のグルメ」©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会

一人飯 もう恥ずかしくない?

2012年からテレビ東京系でシリーズを重ねてきたドラマは韓国や中国でも配信され、今や日本を代表する人気コンテンツの一つに。レッドカーペットでも、松重が登場すると現地ファンから「ゴローサーン」と歓声が上がった。

おじさんがただご飯を食べているだけなのに、東アジアでここまで支持されていることは本当に驚き。僕はいまだにその理由を解説できないけれど、どこかに共通項があるのでしょう」。その共通項とは、きっとシンプルなものだろう。

家族を重んじる韓国では、映画やドラマの中でも大勢で食卓を囲み、多くの料理を分かち合うシーンが多い。一人飯は恥ずかしいとも思われてきたが、最近は街の食堂でも見かける光景になった。「孤独のグルメ」人気が一人飯のイメージを変えた。そんな評価も耳にして「ありがたい」と素直に語る。

ポン・ジュノ監督も「完成楽しみ」

釜山と海をはさんだ福岡出身。幼いころから韓国を身近に感じてきたといい、上映前の記者懇談会では国どうしの関係への強い思いも明かした。「東アジアの国々は手を携えて歩んでいかなきゃいけないと、心の底から思っています。(日本と韓国が)どんな状況になっても、このドラマを愛していただける限り、僕は韓国に来て笑顔を振りまく覚悟はできている。僕が関わったドラマが役に立つのなら、本当にこれからの人生をささげたい」

当初は韓国映画界の巨匠ポン・ジュノに手紙を書いて監督を依頼し、「残念ながらスケジュールが合わないけれど、完成を楽しみにしています」との返事をもらったという。初上映の成功後、改めてポン監督に伝えたいことを聞くと「監督の新作公開、僕らとバッティングさせないでくださいね」と笑った。

全国公開は2025年1月10日の予定だ。

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ライター
ひとしねま

磯崎由美

いそざき・ゆみ 毎日新聞客員編集委員。1989年に毎日新聞入社後、主に社会部記者としてさまざまな社会課題を取材。最近は日韓のエンタメや交流についても執筆している。

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