©山口ヒロキ

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2024.7.27

世界中が注目する怪作! 山口ヒロキ監督「IMPROVEMENT CYCLE -好転周期-」が日本のAI映画をけん引する

国際交流基金が選んだ世界の映画7人の1人である洪氏。海外で日本映画の普及に精力的に活動している同氏に、「芸術性と商業性が調和した世界中の新しい日本映画」のために、日本の映画界が取り組むべき行動を提案してもらいます。

洪相鉉

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一種の「国家ブランド」とも言えるが、日の丸をかけて国際舞台に出る人々が世界から求められるイメージがある。それは日本独自の美意識の「和の美」で特徴づけられる造形美とハイテクノロジーである。これは1982年、リドリー・スコット演出として製作された世界映画史の名作「ブレードランナー」でも見られるように、結局、人類の未来像を表現する上でも重要なひとつの軸を担っている。
 
しかし、この両軸を映像に盛り込むには経済的負担がかかる。熟練したアートディレクターの作業には、多くのスタッフがしがみついて作業をしなければならないため、怖がって諦める事例も少なくない。わかっている。(場合によっては)制度と大資本の後押しに頼る方法も想定できるKムービーとは環境自体が違うからだ。それにもかかわらず、厚かましくも筆者でさえ何かの国際競演があるたびに期待してしまうのは仕方がない。新しいヴィランが出るたびに身をていしてみんなを守る「ドラゴンボール」のヒーローのように、誰かが挑戦してくれるのではないかと。トートロジーになるかもしれないが、特に映画の映像については「好きだからやっているよね」という冷たい論理で何の助成制度もない日本の環境でも。
 

先端テクノロジーの使い手たちが集まるAI映画の激戦地「BIFAN」に堂々選出!

今年、プチョン国際ファンタスティック映画祭(以下「BIFAN」)で新設された「プチョンチョイス: AI映画」セクションもそうだった。映像、シナリオ、サウンド領域でAI(人工知能)テクノロジーをクリエーティブに使用し、映画製作の新たな地平を切り開いている作品を厳選して上映するという趣旨である。同映画祭の執行委員長で「猟奇的な彼女」を製作した興行プロデューサーであり、韓国で初めて映画にCGを取り入れた申哲(シンㆍチョル)氏をはじめ、タリンㆍブラックナイト映画祭にてインダストリー部門とアジア映画プログラマーを担当し、現在はカンヌ国際映画祭併設マーケットにて最新技術等を取り上げる〝NEXT〟のストラテジー・アドバイザーを務めたステンㆍクリスチャンㆍサルビア(Sten Kristian Saluveer)、クリエーティブㆍニューメディアㆍエージェンシー「Ouchhh」の設立者であり、ディレクターとして文化庁メディア芸術祭で入選したこともあるメディアアーティストのフェルディㆍアリッチ(Ferdi Alıcı)氏などの審査委員に招かれて出品されること自体が受賞に等しい競演場。映画産業の国際的な地位にふさわしく、アメリカでは映画製作者で未来学者のデイブㆍクラーク(Dave Clark)監督と映像詩人と呼ばれるメディアアーティストのマインドㆍウェンク(Mind Wank)監督、イギリスではCMで名高いリカルドㆍフセッティ(Riccardo Fusetti)監督、SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト=音楽や映画、新興技術などのイベント)で評価されたXRエキスパートのアダムㆍコール(Adam Cole)、フランスでも広告業界での名声をAI活用分野で続けているレオㆍキャノン(Léo Cannone)監督の作品とアメリカとの共同製作の作品(エテリアルㆍギール&ルㆍムーン/Ethereal Gwirl, Le Moon)まで出品されていた状況。さらに韓国監督の作品3本まで加わった、文字通り「激戦地」でも堂々と選ばれていた作品がある。それは山口ヒロキ監督の「IMPROVEMENT CYCLE -好転周期-」。
 

山口監督や国産クリエーターが作り上げた作品が、多くの国際舞台の視線を集める

驚くべきことは、山口監督をはじめとする本作にかかわる皆が日本で成長した「信用の国産」クリエーターだということ。山口監督は立命館大学の映画部に所属し部長を務めていたほどで、在学中からスカラシップ作品で初めて製作した劇場用長編「グシャノビンヅメ」が、モントリオール・ファンタジア国際映画祭にてグランドブレーカーアワード銀賞を受賞し、2005年BIFANの正式招待作品として上映された。以後製作した「血まみれスケバンチェーンソー」は韓国で劇場公開され、今も映像配信で韓国語字幕版が見られている国際的な実力派監督である。さらに、毎年夏に視聴者に注目される話題のテレビドラマ「世にも奇妙な物語」の脚本家で、筆者の東大同門のかわいい弟でもある安江渡がシナリオを書き、冒頭で触れた「和の美」とハイテクノロジーを調和させ、世界の人々から〝さすが日本〟と言われるようなAIムービーを生み出した。そして、山口監督とはインディーズムービーㆍフェスティバルの第2回グランプリ監督とボランティアで出会い、20年ほどの長い縁(日本的な心の力を感じられる人間関係ではないか!)を続けレコード会社で宣伝プロモーターとして活躍し、12年間カナダとアメリカに在住して国際感覚を築いた寺嶋千景氏がプロデュースを引き受けた。
 

5分40秒の中に込められたメッセージに、タフな大和魂が顔をのぞかせる

予算的に非常に厳しく、なかなか実現が難しかった山口監督の世界観を視覚化するために奮闘したのだから、実に国家代表のタイトルをつけるのも恥ずかしくないプロジェクトと言える。あとで聞くと今年6月に韓国で行われた韓国初のAI映画祭、韓国・キョンサンブクト国際AI・メタバース映画祭でも受賞し、その他にもポーランド、インド、中国、アメリカの映画祭にも入選したことから、筆者のこうした評価は間違いないものだった。しかもこのような筆者の評価は、実はNAFF(BIFANで併設される映画の企画マーケット)の閉幕式以後、北欧のノルディックㆍジャンルㆍインベンションがホストだったカラオケパーティーに参加し、フランス語圏のゲストに頼んでスマートフォンで作品を見せた後に得たコメントで改めて証明された。
 
「La belle et étrange dystopie japonaise(美しくも奇妙な日本のディストピア)」
 
しかし、この「グレートAIウォーク」が観客の胸を打つ理由はこれだけではない。「君たちにこの滅亡の責任はない。しかし、これを繰り返さない責任はある」というセリフを通じて人類の愚かさを指摘しながらも、もう一つの機会と未来の可能性を話しているからだ。ランニングタイム5分40秒のショートフィルムだが、誰かにとっては一生のメッセージになるような作品であり、これが一般に公開されなければ、それこそ悔しいことではないだろうか。そして、期待するようになるのだ。まずは彼らの短編が長編化するというニュースと共に、今も列島で奮闘しながら成長している次の「ジャパンコンテンツのセイバー」を。

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ライター
洪相鉉

洪相鉉

ほん・さんひょん 韓国映画専門ウェブメディア「CoAR」運営委員。全州国際映画祭ㆍ富川国際ファンタスティック映画祭アドバイザー、高崎映画祭シニアプロデューサー。TBS主催DigCon6 Asia審査員。政治学と映像芸術学の修士学位を持ち、東京大留学。パリ経済学校と共同プロジェクトを行った清水研究室所属。「CoAR」で連載中の日本映画人インタビューは韓国トップクラスの人気を誇る。

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