国際交流基金が選んだ世界の映画7人の1人である洪氏。海外で日本映画の普及に精力的に活動している同氏に、「芸術性と商業性が調和した世界中の新しい日本映画」のために、日本の映画界が取り組むべき行動を提案してもらいます。
2024.6.27
レジェンド級作品が軒を連ねる「オンライン日本映画祭2024」はきっと世界の期待を超える!
「あんたのおかげで久しぶりにPB&Jを食べることになるなんて、愉快なことだよ。住むところも違うから共通の話題もだんだん無くなっているのに、こんなふうにおしゃべりができることもね」
予想通りスペイン人のAが例の明るい声で話を切り出すと、他の友達が一斉に同意してくれた。頻繁に会うことはできないが、いつ連絡をしても楽しい大事なヤツら。
世界中が夢中になる! 「オンライン日本映画祭2024」が開催中
6月9日(日)未明、久しぶりのリモート食事会。場合によってはビールを一緒に飲むこともあるが、翌朝日本映画を輸入しようとする某社と諮問会の待ち合わせがあった筆者の都合で、酒を飲むのは自粛することにした。いくら週末が重なるとはいえ時間帯はまちまちだから、欧州や北米在住の友達などに負担をかけないためには、カリカリのトーストにピーナツバター、フルーツジャムを塗って食べるPB&Jサンドイッチが無難なメニューであった。
それでもコロナ禍という鬱な状況を乗り越えるために始めたリモートの集まりが、筆者が2020年からお世話になっている国際交流基金(JF)から聞いた素晴らしいニュースによって企画されたということがただうれしい。しかも、そのニュースが世界で最も長く、カバーする地域としてヨーロッパとアフリカ、アジア、南北アメリカ、オセアニアという、文字通り「5大洋6大州」を併せ持つ映画祭で、それが日本映画祭であることを考えると、日本映画専門の評論家として日本映画伝道師を自任する者として喜ばしい限りだ。JFが日本映画の魅力を海外に発信するプロジェクト「JFF(Japanese Film Festival)」の一環として6月5日(水)~7月3日(水)の4週間にわたって開催する「オンライン日本映画祭2024(Japanese Film Festival Online 2024)」がいつの間にか3回目(以下「3rdエディション」)を迎え、普段、筆者の活動拠点であるソウルが配信エリアに含まれていた1回目の時は、役員として経営に参加している地元メディアの編集局を動員し、広報をサポートしたこともある。
日本の映像文化を余すことなく世界に届ける「3rdエディション」
今年の「3rdエディション」は27の国ㆍ地域で実施され、過去最大の規模である。日本映画人としての自覚はあったが、その魅力の世界配信という新たな視点を認識させ、基金との大切な縁を結ぶ懸け橋としての役割を果たしてくれた恩人の許斐雅文JFFプロデューサーが、映像事業部の皆様と共に長い時間をかけて献身してきた結果である。やはり筆者としてはあちこちに自慢したくて仕方がない。これだけではない。筆者が2年前に閔盛郁(ミンㆍソンウク)副執行委員長(現在は執行委員長)のアドバイザーとして手伝っていた全州国際映画祭に直接推薦し、上映会のチケットの完売はもちろん、SNSを中心に話題となり、結局韓国公開まで決定した東映の22年の力作「ハケンアニメ!」、日本映画アドバイザーを務めた富川国際ファンタスティック映画祭にマスタークラスのプログラムで紹介した「Single8」などを含め、今の日本映画の発展の様子が一目で確認できる話題作が満載である。
特に、今年の驚くべき試みは、映像配信以前から世界の人々に愛されていた日本ドラマ作品も含まれていることである。先の富川国際ファンタスティック映画祭でも、映画映像事業環境の変化を反映するために22年から「シリーズ映画賞」を制定して授賞していることを見ると、時代の流れに合わせた的確な企画とも言える。さらに、そのセレクションが大きな夢を胸に、全力で働く人々の姿を描き、労働を単に生計の手段ではなく、自己実現や修身のための美徳としてきた日本人のモラルの高さをストーリーテリングの動力とした「下町ロケット」と「陸王」の2作は、実にグッドチョイスとしか言いようがない。
そして「3rdエディション」のクライマックスがある。「世界の日本アニメーション」という言葉が「ファクト」として定着するのに貢献した名匠、手塚治虫の作品で、半世紀以上子どもたちに愛されている「ジャングル大帝」の「ジャングル大帝 劇場版」4K修復版がワールドプレミアとして公開されること。これはオフラインの映画祭すら超える企画である。《(アメリカ版)中央日報》の記事を読んで、「どうしても見たい。公開時間に合わせて台湾にでも行かなきゃ!」と韓国の全国紙に勤める筆者の知人が悔しさを爆発させた話をした時、友達のみんなが爆笑した。いつの間にかPB&Jのお皿は片付けられ、熱心にプログラムのメモを取っていた海外の全員。
「3rdエディション」を国内外にもっと広めたい!
もちろん、レジェンドクラスのプログラムを誇る「3rdエディション」を権利などの関係で、日本を除くそれぞれの開催国でしか見ることができないのは極めて残念なことである。しかしこれを読んだ読者の皆様には、筆者と同じように惜しい思いをする海外在住の、あるいは外国人の皆様を満足させるために、どうか広報をしていただければと提案したい。それで日本映画は一層発展のための土台を作ることができるだろう。他方、「3rdエディション」のおかげで今日も鼻が高くなった筆者は、今年いよいよ毎日新聞《ひとシネマ》の者として参加を予定している東京国際映画祭で、JFの皆様とどのように再会できるか期待しているのだ。