2024年を代表する映画、俳優を選ぶ「第79回毎日映画コンクール」。時代に合わせて選考方法や賞をリニューアルし、新たな一歩を踏み出します。選考経過から受賞者インタビューまで、ひとシネマがお伝えします。
第79回毎日映画コンクールの表彰式を終え、記念写真に納まる受賞者たち=2025年2月13日、新宮巳美撮影
2025.2.13
82歳カルーセル麻紀 30年前の新品黒ドレスは「この日のためにあった!」 毎日映画コンクール贈呈式
第79回毎日映画コンクールの贈呈式が2月13日、東京都内で行われた。終了後、取材に応じた受賞者は、高揚した表情のまま喜びを語ってくれた。
「若い2人の〝今しかない輝き〟を撮るんだ」池松壮亮
最初に登場したのは、映画「ぼくのお日さま」でフィギュアスケートのコーチと生徒をそれぞれ演じた、助演俳優賞の池松壮亮とスポニチグランプリ新人賞の越山敬達。贈呈式でも、受賞スピーチをする越山を、まるでコーチのように心配そうに見つめていた池松。
映画は20代の奥山大史監督の商業映画デビュー作。池松は、企画段階から関わり、撮影中は初主演の越山や、演技経験がなかったもう1人の生徒、さくら役の中西希亜良から自然な演技を引き出すことを求められた。それだけに「この作品で賞を取れたことも、敬達と2人で一緒に取れたことも、とてもうれしい」と喜ぶ。「主役として敬達と希亜良が映画の真ん中に立ってくれて、この2人の今しかない輝きをみんなで育てるんだという思いでやってきました。敬達が賞を取れたことは僕以外もみんな、本当に喜んでいると思います」
「僕一人じゃ何もできなかった」越山敬達
越山の魅力を、池松は「子役の方って割とガツガツしてる方が多いのですが、敬達は本当に控えめでボーッとしていて、その辺がものすごい好きです」と語り、「このまま感受性が高く、シャイで、何事にも一生懸命な敬達のままでいてほしい」と願った。
一方、越山は池松を「近くで存在するだけで心強い。心を和らげてくれるような柔らかいお兄さん」と言い、「僕一人じゃ、何もできなくて、池松さんがいたからこそ、映画の中に僕がいた。池松さん、監督さん、僕を支えてくださった皆さんに本当感謝しかないです」と何度も謝意を語っていた。
「現実とは思えなかった」カルーセル麻紀
「一月の声に歓びを刻め」で助演俳優賞を受けたカルーセル麻紀は、三島有紀子監督にエスコートされて現れた。現在82歳で、79回の歴史を持つ毎日映画コンクールとほぼ〝同世代〟。毎日映コンの歴代受賞作はほぼ見ているというほどの映画好きだ。1960年代初めに芸能界に入り、数々の映画に出演してきたが、賞には縁がなかった。「(受賞が決まって)周りは騒いでいたけど、ありえないこと。私はいただくまで現実とは思えなかった」と話した。
撮影は極寒の北海道・洞爺湖。食事の休憩は短く、共演者と談笑していると三島監督に注意された。撮影中、ほとんど会話はなかった監督のことを、「鬼」と呼んでいたと笑う。カルーセルをモデルに作家の桜木紫乃が書き上げた小説「緋の河」を三島監督が読み、カルーセルの起用を着想。桜木が2人をつないで撮影が始まった。「こんな大変な映画のチャンスを私にくれた三島監督と桜木さんにはお礼を言いたい。映画出演は12年ぶり。この年でまさか映画のオファーがくるとは思わない」
贈呈式で着用した黒のドレスは、約30年前にオートクチュールで作ったが、一度も着ないまま衣装部屋に眠っていた。「このドレスはきょうのためにあった。この晴れやかな舞台でお披露目できてよかった」と裏話を明かし、「82歳がこんな半分裸で出てきて、すみません」と記者を沸かせると、三島監督と引き揚げた。
「また来られて、すごくうれしい」三宅唱
最後に現れたのは、映画「夜明けのすべて」で日本映画大賞、監督賞、TSUTAYA DISCAS映画ファン賞を受賞した三宅唱監督。前作「ケイコ 目を澄ませて」(22年)に続き、2作連続で日本映画大賞、監督賞の快挙だ。「1 回、(賞を)取ると、そんなに呼んでもらえないだろうとか勝手に思ってました。またこういうふうに来られて、すごくうれしい」と喜んでいた。