2024年を代表する映画、俳優を選ぶ「第79回毎日映画コンクール」。時代に合わせて選考方法や賞をリニューアルし、新たな一歩を踏み出します。選考経過から受賞者インタビューまで、ひとシネマがお伝えします。
第79回毎日映画コンクールの贈呈式を終え、記念撮影に応じる受賞者たち=2025年2月13日、新宮巳美撮影
2025.2.13
監督賞・三宅唱「良い作品と良い現場の両立を」 毎日映画コンクール贈呈式
第79回毎日映画コンクール贈呈式が2月13日、東京・めぐろパーシモンホールで行われた。贈呈式では2024年の日本映画界を代表する受賞者が、トロフィーを手に口々に喜びを語った。スタッフ部門で監督賞を受賞した「夜明けのすべて」の三宅唱監督は、前作「ケイコ 目を澄ませて」に続く受賞。「毎日映コンはスタッフの賞を設け、いつも気にしている。今回は監督一人だが、スタッフ全員でいただいた」と喜んだ。
毎日映コンは作品、俳優、スタッフ、ドキュメンタリー、アニメーションの各部門とTSUTAYA DISCAS映画ファン賞と、幅広く映画を顕彰している。今回は贈呈式に続いて、大藤信郎賞の「私は、私と、私が、私を、」と日本映画大賞の「夜明けのすべて」が上映された。
ドキュメンタリー映画賞・ペヤンヌマキ「政治について話すきっかけに」
ドキュメンタリー映画賞「映画 〇月〇日、区長になる女。」のペヤンヌマキ監督は、映画のポスターを胸に下げて登場。「杉並区長選のドキュメンタリーだが、一人の区民が立ち上がって政治に参加するまでのドキュメンタリーでもある。草の根の力を信じて、活動した全員にいただいた賞だ。映画を見た人から励まされたという声も聞き、政治について話すきっかけになれた」と話した。受賞記念の再上映も行われるという。
大藤信郎賞「私は、私と、私が、私を、」の伊藤里菜監督は「大学の卒業制作で、初めてのアニメーション作品。悩んで大変だったが完成し、たくさんの人に見てもらえてうれしい」とあいさつした。
脚本賞・濱口竜介「音楽が先導してくれた」
録音賞の浦田和治と撮影賞の池田直矢は、「十一人の賊軍」での受賞。浦田は「スタッフの中で最年長で、よく声をかけてくれた。作品が評価されたと思っている」。池田は「映画の賞は初めて。映画の世界で出会った人に感謝し、その思いを背負い、届けられる映画を作り続けたい」。美術賞は「箱男」の林田裕至。「30年前から企画し、ドイツでは明日から撮影という日に中止になった。因縁ある作品で、またやろうという人がいて、完成したことに感謝したい」
脚本賞の濱口竜介と音楽賞の石橋英子は「悪は存在しない」で受賞。海外滞在中の石橋は、文書「音楽を作っている間は夢の中のようで、もったいないくらい幸せな時間だった」とメッセージを寄せた。濱口は「自分のこと以上にうれしいのが音楽賞。石橋さんの音楽が映画を先導してくれた。未熟な脚本を見られる映画にしてくれたのはキャストやスタッフ、取材に協力してくれた地元の人のおかげ」。
「夜明けのすべて」で監督賞の三宅唱は「映画は、賞のカテゴリーのないスタッフの力も集まってできあがる。良い現場と良い作品を両立させたい。映画は一人では作れない。スタッフと共に仕事をしていけたらと思う」と関係者の力をたたえた。