第96回アカデミー賞授賞式は、3月10日。コロナ禍の影響に加え大規模ストライキにも直撃されながら、2023年は多彩な話題作、意外な問題作が賞レースを賑わせている。さて、オスカー像は誰の手に――。
2024.3.07
「ゴジラ-1.0」オスカー像手にできるか 宮崎監督2度目の栄冠は 第96回アカデミー賞授賞式迫る
第96回アカデミー賞は10日(日本時間11日)、ロサンゼルス・ドルビーシアターで授賞式が行われる。2023年は俳優と脚本家のストライキの影響で、製作、公開日程が狂い、候補に並んだ作品は例年以上に多彩、多様。日本映画も3部門で候補入りした。さて賞の行方は――。
スト余波でアート色強く 日本関連が存在感
賞レースの中心は作品、監督、俳優の3賞など最多13部門で候補入りした「オッペンハイマー」だろう。ゴールデングローブ賞ではドラマ部門の作品賞など5冠と前哨戦でもリード。クリストファー・ノーラン監督は「インセプション」「ダンケルク」など何度も候補になりながら、作品賞や監督賞は逃してきた。栄冠をつかめるか。
23年は、5月から脚本家組合が、7月から俳優組合がストライキに突入。俳優組合が11月に妥結するまで製作が滞り、ハリウッド作品は品薄だ。例年に増して、欧州映画祭に出品されたアート色の強い作品が目立つ。
作品賞など11部門で候補入りの「哀れなるものたち」は、ベネチア国際映画祭で金獅子賞。ゴールデングローブ賞のミュージカル・コメディー部門で作品賞などを制した。ギリシア出身のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンは前作「女王陛下のお気に入り」でも組んだ強力コンビ。監督賞、主演女優賞でもノミネートされている。
作品賞、監督賞、主演女優賞など計5部門で候補入りした「落下の解剖学」は、フランス映画。カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した。これに次ぐグランプリを受賞したのが、英国映画「関心領域」だ。こちらも作品賞など5部門でノミネート。作品賞、脚本賞候補の「パスト ライブス/再会」も同じカンヌのコンペ出品作品と、作品賞レースはまるでカンヌの〝再戦〟の様相だ。
アカデミー賞はもはや動画配信サービスなしに語れない。作品賞だけでもネットフリックスの「マエストロ:その音楽と愛と」、アップルの「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」と力作が並ぶ。
日本映画も3部門で候補に
米国では「オッペンハイマー」と同日公開された「バービー」は、興行収入では圧勝しながら賞レースではもう一息。作品賞、助演男女優賞など7部門で候補入りしたものの、グレタ・ガーウィグ監督、主演のマーゴット・ロビーは候補から漏れた。1970年代の米国が舞台の「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」、風刺コメディーの「アメリカン・フィクション」は共に、地味な内容ながら作品賞など5部門で候補となっている。
俳優賞候補20人のうち、オスカー受賞経験者は3人だけ。主演女優賞では米先住民のリリー・グラッドストーン、ドイツのザンドラ・ヒュラーが候補入りし、注目だ。
今回は日本関連も存在感を示す。長編アニメーション映画賞で「君たちはどう生きるか」が受賞すれば、宮崎駿監督は03年「千と千尋の神隠し」に続いて2度目の快挙だ。国際長編映画賞にはビム・ベンダース監督の「PERFECT DAYS」が候補入り。ドイツの巨匠が日本で撮影した日本映画。
視覚効果賞では「ゴジラ-1.0」が候補入り。「ナポレオン」や「ミッション:インポッシブル」など大作と並んだのは、日本の技術がひけをとらないレベルに達した証しだろう。山崎貴監督らはハリウッド入りして作品をプッシュ。オスカー像を手にした受賞スピーチの晴れ姿、期待したい。
【第96回アカデミー賞全候補者・作品】
□作品賞
ベン・ルクレール、Nikos Karamigios、コード・ジェファーソン、ジャーメイン・ジョンソン | |
マリー=アンジュ・ルシアーニ、デイビット・ティオン | |
デビッド・ハイマン、マーゴット・ロビー、トム・アカーリー、Robbie Brenner | |
マーク・ジョンソン | |
ダン・フリードキン、ブラッドリー・トーマス、マーティン・スコセッシ、ダニエル・ルピ | |
ブラッドリー・クーパー、スティーブン・スピルバーグ、フレッド・バーナー、エイミー・ダーニング、クリスティ・マコスコ・クリーガー | |
エマ・トーマス、チャールズ・ローべン、クリストファー・ノーラン | |
デイビット・イノホサ、クリスティーン・べイコン、パメラ・コフラー | |
エド・ギニー、アンドリュー・ロウ、ヨルゴス・ランティモス、エマ・ストーン | |
ジェームス・ウィルソン |
□監督賞
ジュスティーヌ・トリエ | |
マーティン・スコセッシ | |
クリストファー・ノーラン | |
ヨルゴス・ランティモス | |
ジョナサン・グレイザー |
□主演男優賞
ブラッドリー・クーパー | |
コールマン・ドミンゴ | |
ポール・ジアマッティ | |
キリアン・マーフィー | |
ジェフリー・ライト |
□主演女優賞
アネット・ベニング | |
リリー・グラッドストーン | |
ザンドラ・ヒュラー | |
キャリー・マリガン | |
エマ・ストーン |
□助演男優賞
スターリング・K・ブラウン | |
ロバート・デ・ニーロ | |
ロバート・ダウニー・Jr. | |
ライアン・ゴズリング | |
マーク・ラファロ |
□助演女優賞
エミリー・ブラント | |
ダニエル・ブルックス | |
アメリカ・フェレーラ | |
ジョディ・フォスター | |
ダバイン・ジョイ・ランドルフ |
□脚本賞
ジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ | |
デビッド・ヘミングソン | |
ブラッドリー・クーパー、ジョシュ・シンガー | |
May December(原題) | サミー・バーチ、アレックス・メチャニク |
セリーヌ・ソング |
□脚色賞
コード・ジェファーソン | |
グレタ・ガーウィグ、ノア・バームバック | |
クリストファー・ノーラン | |
トニー・マクナマラ | |
ジョナサン・グレイザー |
□撮影賞
エドワード・ラックマン | |
ロドリゴ・プリエト | |
マシュー・リバティーク | |
ホイテ・バン・ホイテマ | |
ロビー・ライアン |
□視覚効果賞
ジェイ・クーパー、Ian Comley、アンドリュー・ロバーツ、ニール・コーボールド | |
山崎貴、渋谷 紀世子、高橋正紀、野島達司 | |
ステファン・セレッティ、Alexis Wajsbrot、Guy Williams、テオドール・ビアレク | |
アレックス・ヴトケ、シモン・ココ、Jeff Sutherland、ニール・コーボールド | |
チャーリー・ヘンリー、Luc-Ewen Martin-Fenouillet、シモン・ココ、ニール・コーボールド |
□美術賞
サラ・グリーンウッド、ケイティ・スペンサー | |
ジャック・フィスク、アダム・ウィリス | |
アーサー・マックス、エリ・グリフ | |
ルース・デ・ヨング、クレア・カウフマン | |
ジェームス・プライス、ショナ・ヒース、Zsuzsa Mihalek |
□衣装デザイン賞
ジャクリーヌ・デュラン | |
ジャクリーン・ウェスト | |
ジャンティ・イェーツ、デイビット・クロスマン | |
エレン・ミロイニック | |
ホリー・ウォディントン |
□メイクアップ&ヘアスタイリング賞
Golda | カレン・ハートレイ、Suzi Battersby、Ashra Kelly-Blue |
カズ・ヒロ、ケイ・ジョージウー、ロリ・マッコイ・ベル | |
ルイーザ・アビル | |
ナディア・ステーシー、マーク・クーリエ、ジョッシュ・ウェストン | |
Ana López-Puigcerver、デイビット・マルティ、ムンセ・リベー |
□作曲賞
ローラ・カープマン | |
ジョン・ウィリアムズ | |
ロビー・ロバートソン | |
ルドウィグ・ゴランソン | |
ジャースキン・フェンドリックス |
□歌曲賞
THE FIRE INSIDE(Flamin' Hot) | ダイアン・ウォーレン |
I'M JUST KEN(バービー) | マーク・ロンソン、Andrew Wyatt |
IT NEVER WENT AWAY(ジョン・バティステ: アメリカン・シンフォニー) | ジョン・バティステ、Dan Wilson |
WAHZHAZHE (A SONG FOR MY PEOPLE)(キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン) | スコット・ジョージ |
WHAT WAS I MADE FOR?(バービー) | ビリー・アイリッシュ、フィニアス・オコネル |
□編集賞
ローラン・セネシャル | |
ケビン・テント | |
セルマ・スクーンメイカー | |
ジェニファー・レイム | |
ヨルゴス・モヴロプサリディス |
□音響賞
Ian Voigt、エリック・エーダール、イーサン・ヴァン・ダー・リン、Tom Ozanich、ディーン・ズパンシク | |
Steven A. Morrow、リチャード・キング、ジェイソン・ルーダー、Tom Ozanich、ディーン・ズパンシク | |
クリス・ムンロ、ジェームズ・マザー、クリス・バードン、Mark Taylor | |
ウィリー・D・バートン、リチャード・キング、ゲイリー・リッツオ、Kevin O'Connell | |
ターン・ウィラーズ、ジョニー・バーン |
□国際長編映画賞
IO CAPITANO | イタリア |
日本 | |
スペイン | |
ドイツ | |
イギリス |
□長編アニメーション映画賞
宮崎駿、鈴木敏夫 | |
ピーター・ソーン、デニース・リーム | |
ニック・ブルーノ、トロイ・クイーン、Karen Ryan、ジュリー・ザッカリー | |
パブロ・ベルヘル、Ibón Cormenzana、Ignasi Estapé、サンドラ・タピア | |
ケンプ・パワーズ、Justin K. Thompson、Phil Lord、クリス・ミラー、エイミー・パスカル、 |
□短編アニメーション映画賞
LETTER TO A PIG | タル・カンター、Amit Russell Gicelter |
NINETY-FIVE SENSES | ジェルーシャ・ヘス、ジャレッド・ヘス |
OUR UNIFORM | イェガネ・モガダム |
PACHYDERME | ステファニー・クレメント、マーク・リウス |
WAR IS OVER! INSPIRED BY THE MUSIC OF JOHN & YOKO | デイブ・マリンズ、ブラッド・ブッカー |
□長編ドキュメンタリー映画賞
ボビ・ワイン:ゲットー・プレジデント | モージズ・ブワヨ、クリストファー・シャープ、ジョン・バトセック |
THE ETERNAL MEMORY | |
FOUR DAUGHTERS | カウテール・ベン・ハニア、Nadim Cheikhrouha |
TO KILL A TIGER | ニシャ・パフージャ、Cornelia Principe、デイビット・オッペンハイム |
実録 マリウポリの20日間 | ムスチスラフ・チェルノフ、ミッチェル・マイズナー、ラニー・アロンソン=ラス |
□短編ドキュメンタリー映画賞
THE ABCS OF BOOK BANNING | シエラ・ネビンス、トリッシュ・アドレジック |
THE BARBER OF LITTLE ROCK | ジョン・ホフマン、クリスティン・ターナー |
ISLAND IN BETWEEN | S. Leo Chiang、ジーン・ツィン |
ベン・プラウドフット、クリス・バワーズ | |
NǍI NAI & WÀI PÓ | シーン・ワング、サム・デイビス |
□短編映画賞
THE AFTER | ミサン・ハリマン、ニッキー・ベンサム |
INVINCIBLE | ビンセント・ルネ・ロルティ、サミュエル・キャロン |
KNIGHT OF FORTUNE | Lasse Lyskjær Noer、Christian Norlyk |
RED, WHITE AND BLUE | ナズーリン・チョウドリー、サラ・マクファーレーン |
ウェス・アンダーソン、ステーヴン・M・レイルズ |