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2023.6.24

作り手の思いが込められている! ユーチューバーRhythmのコラムを元キネ旬編集長が評価する

ひとシネマには多くのZ世代のライターが映画コラムを寄稿しています。その生き生きした文章が多くの方々に好評を得ています。そんな皆さんの腕をもっともっと上げてもらうため、元キネマ旬報編集長の関口裕子さんが時に優しく、時に厳しくアドバイスをするコーナーです。

関口裕子

関口裕子

Rhythm

Rhythm

ダンサーでユーチューバーのひとシネマライターRhythmが書いた映画コラムを読んで、元キネマ旬報編集長・関口裕子さんがこうアドバイスをしました(コラムはアドバイスの後にあります)。

エンターテインメントには作り手の思いが込められている

ダンサーでダンスクリエイターであるRhythmさんがテーマとするのは「ダンス」。「マジック・マイク ラストダンス」では、「ダンスとは何か?」が縦軸として、横軸はショーを作り上げる過程と、元ストリッパーのマイクと彼をスカウトした資産家マックスの「人間ドラマ」が描かれる。
 
注目のダンスシーンは二つ。まずは、マイクがバスの車内で、役人である女性に公演を行う許諾を得るためのダンスシーン。もう一つは、マックスのプロデュース、マイクの演出によるストリップショー。Rhythmさんは、ストリートダンス、バレエ、ジャズの要素を組み込んだこのストリップショーを絶賛する。
 
コラムには、ストーリーの引用がやや多いようにも感じるが、ダンスのポイントを解説するには必要なことなのだろう。
 
「世に存在する全てのエンターテインメントコンテンツには作り手の思いや、時間、技術が込められている」。映画を見る楽しみとは、それを見つけ出すこと。Rhythmさんのコラムには、それを発見した喜びを発信せざるを得ない熱を感じた。

Rhythmのコラム

本日公開、スティーブン・ソダーバーグ監督「マジック・マイク ラストダンス」を見た。この映画は2012年公開「マジック・マイク」の続編である。今回の作品を見て、まず言うならば「フリーダム!!」の言葉に尽きる! そう思わせたのは間違いなく、劇中のダンスシーンである。
 
中盤でのバスの車内でのダンスシーン。狭い車内でも、空間を生かした振り付けと演出。公演を行う許諾を得るため、役人である女性に理解を求めるためのダンスシーンである。まるで女性本人になったかのような見え方で、カメラワークにもこだわりを感じる。
 
この物語は「ダンス」とはなんなのかを縦軸にしている。それに横軸として登場人物たちが作品作りをしていく過程と、元ストリッパーの主人公マイク・レーンと彼をスカウトする資産家マックスの間での人間ドラマが描かれている。

 

「もう踊らない」元ストリッパーが演出家に抜てき!

出会いはとあるパーティー。Barで働くマイクの過去を知り、自室へ呼び出すマックス。彼女は失ってしまった自分を取り戻すため、欲望のままの自分になるため、彼にダンスを求める。「もう踊らない」と決めていたマイク。資産家の財力と彼女の願いに応えるべく、ダンスを彼女にささげる。このシーンはまさに「感情の解放」フリーダム。ダンスで表現される妖艶さを感じることができる。ダンス自体も本当に素晴らしいものである。やはりこのシリーズが主演のチャニング・テイタムの実話ということもあり、彼のダンスのスキルの高さを見ることができる。これをきっかけにマイクはマックスの所有するロンドンの劇場の公演の演出家に抜てきされ、ストリップダンスショーを制作していく。

 
ここから2人はさらに意気投合し、世界の名だたるダンサーたちをスカウトして回る。理想を掲げ、興奮する2人。しかしリハーサルが始まり作品が少しずつ完成に近づいていくと、それぞれに思い描く理想の違いからぶつかってしまう。同じ時期にマックスの夫の圧力によりショーの実現が難しくなっていく。このショーを決行すれば、マックスの財産も没収となってしまうことから彼女は公演の中止を決断する。そこでさらにマイクとマックスの関係は悪化していく。
 
諦められないマイクは彼女と初めて出会った時の思い、彼女が求めるショーを実現するため強行突破を試みる。そんなマックスに対する思いを演目に追加して、ダンスで彼女への愛を表現するのだった。マイクが作り出したショーは彼女への思いを込めたものだけではなく、観客をも魅了する演出であった。
 

ミュージカルになってもぜひ見にいきたい

メインのステージはもちろん、花道は観客席ギリギリの位置まで伸び、花道ステージの面はどの角度からもしっかりと演者を見ることができるように作られていた。映画の劇中とはいえ演目の内容、ステージ構成に至っても抜け目のない作りになっている。そして何よりダンサーたちのスキルの高さ、ストリップショーではあるがストリートダンスはもちろんバレエ、ジャズの要素も組み込まれており、この場面が単体のミュージカルになってもぜひ見にいきたいと感じた。ストリッパーダンスが未経験の女性客をピックアップしステージに上げての演出など、ストリップショーになじみのない人と視聴者を魅了する演出が多く組み込まれている。

 
クリエーティブな作品作りがどのようになされているのかうかがいながら、マイクとマックス2人の愛が育まれていく様子を見ることができるのが、やはりこの映画の大きな魅力ではないだろうか。
 

フリーダムさを感じるステージ演出

そしてこの作品のように、世に存在する全てのエンターテインメントコンテンツには作り手の思いや、時間、技術が込められている。他の作品にはない限界のないフリーダムを感じるステージ演出。この映画はそんな作り手が表現する愛情と熱量が伝わる作品である。「マジック・マイク ラストダンス」を見る方には作り手側の思いも感じながら見ていただきたいと思う。映画1本で登場人物たちにこんなにも感情移入をしてしまい、ダンスに魅了される・・・・・・。

まさにこの作品は「フリーダムを感じる」「マジック」そのものだと言える。

ライター
関口裕子

関口裕子

せきぐちゆうこ 東京学芸大学卒業。1987年株式会社寺島デザイン研究所入社。90年株式会社キネマ旬報社に入社。2000年に取締役編集長に就任。2007年米エンタテインメント業界紙VARIETYの日本版「バラエティ・ジャパン」編集長に。09年10月株式会社アヴァンティ・プラス設立。19年フリーに。

ライター
Rhythm

Rhythm

りずむ(ダンサークリエイター)
大阪芸術大学舞台芸術学科ポピュラーダンスコース卒業。
卒業後、ユニバーサルスタジオジャパンでパレードダンサーとして出演。その他矢沢永吉、西野カナ、関ジャニ∞、SnowMan、SixStonesなどアーティストのバックダンサーを務め、現在YouTubeをメインに活動中。
RedLinX https://www.youtube.com/channel/UCQVZJQHPNRkTGV1dzw2aUdQ
Rhythm https://www.youtube.com/channel/UCWlTteWTWPg8caUVfVXJj6g

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