フォールガイ

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2024.8.30

127分、息つく暇なし! アクションだけじゃない、多面的な魅力を秘めた「フォールガイ」

誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。

座間耀永

座間耀永

スポットライトが当たることのないスタントマン

 アクション映画は今も昔も人気の途絶えないジャンルである。アクションの種類もカーチェイス、バトルロワイヤル、戦国物と実にさまざまだ。しかし、「フォールガイ」は、一味も二味も違う。一つの映画作品をめぐって主人公が大波乱に巻き込まれるのだ。しかもその主人公は、裏方と言われるスタントマンだ。一番好きなジャンルがアクションコメディの私だが、スタントマンが主役の映画はこれまで見たことがない。なぜスタントマンにスポットライトを当てたのか疑問に思っていたが、それは監督の経歴を知るまでのこと。なんと監督のデビット・リーチ自身にスタントマンのキャリアがあり、「ファイト・クラブ」でブラッド・ピッドのスタントダブルも務めていたと知って驚いた。監督に転身後は、「ジョン・ウィック」「デッドプール2」「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」さらには「ブレット・トレイン」等を手がけている。
監督が「スクリーンに映る俳優のために、命と体を危険にさらすスタントマンたちへのラブレター」という思いが込められた映画だけに、どのシーンにも観客はぐいぐい引きつけられる。
 

失敗や挫折を重ねながらも前進する主人公

 私は最初、タイトル「フォールガイ」の意味を理解できていなかったが、映画を見ているうちに、主人公がスタントマンの仕事上、高所から飛び降りるアクションなどに挑んでいるだけでなく、彼が罠(わな)に引っかかったり、元恋人とまた恋に落ちたりと、いろいろな意味でたくさん落ちていることがわかった。スタント用語での「フォールガイ」は、「高所から人が落下すること」をさし、辞書を引くと、「身代わりになる人」の意味だとある。ライアン・ゴズリング扮(ふん)するコルトが自身を「誰かの助手席」のような存在であったと言うセリフが印象深い。
落ち込み打ちのめされるコルトに、スタントコーディネーターが「私が担当してきた映画の主人公は、打ちのめされても前に進み続ける」と声をかけるシーンがあるが、まさに名言だと思う。挫折しても立ち上がり、進み続ける主人公という設定はまさにコルトの人生そのものを表しているのではないだろうか。
 

超絶カースタントでギネス世界記録を更新! 

実際にアクション超大作であることは間違いなしの本作品だが、スタントとスタントマンにフォーカスを当てているため、生身の人間が実際に体を張って撮影する桁違いのスタント技術に目を見張る痛快作である。その中でも特筆すべきは、「キャノンロール」と呼ばれる車両を横転させる高度なカースタントを平坦(へいたん)な場所のビーチで敢行し、車を8回転半もスピンさせたシーンである。これにより、「007/カジノ・ロワイヤル」が達成した7回転の記録を破ってギネス世界記録を更新したというからまさに驚異的だ。
 

数々の名作オマージュと名曲が

名作映画へのオマージュと、幅広い世代に親しまれている名曲の数々にも注目だ。作中に散りばめられた小ネタに思わず試写会場でも笑いが起きるほどであった。例えば、世界が誇るポップクイーンのテイラー・スウィフトの「All Too Well」が流れるシーンでは、元恋人のジョディに撮影を通して再会できたものの、気持ちがすれ違い、もどかしいコルトの気持ちに重なる。和訳された歌詞が字幕で出るので、BGMとしてではなく、2人の恋模様と歌詞の内容がリンクして伝わってくる。80年代を代表するKISSの大ヒット曲も、原曲だけでなく今をときめく新悦ロックのYUNGBLUDがカバーしているので実に聴きごたえがある。KISSやAC/DCにとどまらず、ザ・ダークネスからT-Pain&Ludacrisまで各世代に響く曲と「ノッティングヒルの恋人」や「ターミネーター」といった名作のオマージュは誰もの心をわしづかみにし、より作品の世界観に没頭すること間違いなしだ。ちなみに、エミリー・ブラントが演じたジョディが初監督する映画「メタルストーム」は、実際に製作され、1983年に公開されたSFアドベンチャー大作である。その製作現場と撮影過程の再現に挑んだことで、よりリアリティー感が増した本作は、観客を物語にぐっと引き寄せていくだろう。
 

明かりがつくまで席は立たないで

 洋画はエンドロールがとても長いという理由で、スクリーンにテロップが流れ始めたらすぐに立ってしまう方々に一言。この作品は本当に最後の最後まで目が離せない。まさかの誰も予想のできないシークレットが残されているのだ。もちろんネタバレは避けるが、とにかく誰もが「おお」とうなるオチがあるので、大必見のエンドロールをお見逃しなく!
 

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ライター
座間耀永

座間耀永

ざま・あきの 2006年生まれの高校生。小3から子供新聞記者、毎年、数々の作文コンクールに入賞。SDGsシンポジウム登壇。2023年6月、「言葉の力」コミュニティ、非営利型一般社団法人AZ Bande(アイジー バンデ)を設立。作文教室やSDGs活動、ヨット普及活動を通し、売り上げの一部を教育クーポンを配布する団体に寄付。カナダのセーリング団体ISPA創始者に師事、小型船舶2級保持者。会社名は亡父の愛艇から。


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