「47RONIN」より © 2013 Universal Studios. All Rights Reserved.

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2023.9.18

キアヌ・リーブスの変わらぬ魅力を徹底解剖:キアヌと日本、愛し愛される理由と関連作品をご紹介

最新主演作「ジョン・ウィック:コンセクエンス」が9月22日(金)に公開されるキアヌ・リーブス。来日プロモーションはかなわなくなったものの、公開を前に「ジョン・ウィック」シリーズの紹介、俳優としてのキャリアに人となりなど、全方位的にキアヌの魅力に迫ります。

斉藤博昭

斉藤博昭

「表参道あたりの静かな裏通りに、1カ月くらいアパートを借りて暮らしたい。車や人の行き来が少なくなる夜中に、ポルシェか何かに乗って、静かな東京の街をドライブしてみたいな」
 
これは「ジョン・ウィック」1作目で来日したキアヌ・リーブスに「日本でやってみたいことは?」と聞いた際の答え。このような〝よくある〟質問にスターたちは、それなりに受けのいい返答をするものだが、キアヌの場合、「表参道の裏通り」など具体的。しかもその話し方は社交辞令ではなく、本当に心からそう思っている誠実さが籠もっている。
 
自然体で日本への愛を語るのが、キアヌの特徴だ。そのためかインタビューではパブリシストから「ラーメンの話はNG」と言われることも。キアヌが何でも誠実に答えてしまい、映画の話の時間が削られてしまうからだろう。
 
かつての来日時に、一人でフラリと入ったラーメン店の味が気に入り、リピーターになった逸話は有名だが、その他にも取材日の1週間前に来日し、瀬戸内海の島々や美術館を訪れていたし、友人に北海道旅行に誘われ、仕事で行けなかった時は「彼から余市のウイスキー醸造所の写真が送られてきて、めちゃくちゃ残念! ウイスキーが好きだからね」と話していた。
 
今年に入ってからも東京で歌舞伎を鑑賞し、なぜか栃木県でキアヌ目撃情報が頻出。東京のバーで飲んだ緑茶入りカクテルに魅せられた話など、キアヌの日本愛エピソードは事欠かない。ドイツでバイクに夢中になった逸話のほか、もちろん他国の思い出もたくさんあるなか、やはり日本は抜きんでている印象だ。
 
その原点のひとつは、サニー千葉(千葉真一)かもしれない。アクション映画が好きになったきっかけを聞くと、キアヌから必ず出てくるのが彼の名前だ。日本人相手のインタビューにおけるリップサービスではなく、真実らしい。
 
来日時にキアヌが出演したテレビ番組に、千葉真一がサプライズゲストとして登場した際、キアヌは「オーマイガー」を連発。千葉を前に興奮し、緊張し、時に顔を真っ赤にする表情は、まるで子供のようで、心からのリスペクトが伝わってきた。さらにキアヌは「ミフネ(三船敏郎)の大ファン」と何度も公言している。
 

「ドラキュラ」ジャケット写真

「ドラキュラ」で石岡瑛子の衣装に身を包み、「JM」でビートたけしと共演。「JM」では伝説的になったせりふも

 そんな〝日本愛〟にあふれたキアヌには、出演映画にも日本との接点が多く見受けられる。
 
まず、今から31年もさかのぼった1992年の「ドラキュラ」。巨匠フランシス・フォード・コッポラの作品ではあるが、その前年、キアヌは「マイ・プライベート・アイダホ」で日本でもファンが急増。同じく当時、大人気を博していたウィノナ・ライダーの婚約者役で、2人の共演という話題が先行。
 
そんな作品の衣装デザインを日本人の石岡瑛子が担当し、彼女も一躍クローズアップされた。極論すれば、キアヌが日本人アーティストの存在を母国に知らしめたとも言える。石岡は「ドラキュラ」でオスカーを手にした。現在に至るまでアカデミー賞で衣装デザイン賞を受賞した日本人は、「地獄門」で受賞した和田三造、「乱」で受賞したワダ・エミと彼女のみである。
 
その後、「スピード」でトップスターの揺るぎない地位を手に入れたキアヌは、同作の次に撮った作品で日本との本格的な接点が生まれる。95年の「JM」だ。脳に埋め込まれたシリコンチップで情報を運ぶ主人公を演じたSFアクション。
 
敵対するのが日本人ヤクザという設定で、その組長をビートたけしが演じ、ハリウッド映画における〝キアヌ×たけし〟の構図は日本のメディアもにぎわせた。「JM」はセリフも〝伝説〟となった。追跡を受け、ボロボロ状態になるキアヌが「東京の帝国ホテルでクリーニングしたシャツを着たい」と叫ぶが、このセリフはキアヌのアドリブだという。
 
ここでキアヌの〝帝国ホテル愛〟が発覚し、基本的に彼の来日キャンペーンでは映画会社が帝国ホテルを用意するようになる。一度、別のホテルでインタビューが行われたことがあったが、映画会社の人に聞くと「宿泊は帝国です」とのことだった。
 

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「47RONIN」で真田広之らと共演、最新作で念願の再タッグ

 
その後、「マトリックス」の監督、ウォシャウスキー姉妹(シリーズ開始時は〝兄弟〟)から、アニメ版の「攻殻機動隊」や「AKIRA」を見るように勧められ、日本カルチャーへの関心を深めたキアヌには、2013年の「47RONIN」で濃密な日本との関係が生まれた。
 
「忠臣蔵」を外国人(カール・リンシュ監督)目線で捉え、主演のキアヌ以外のメインキャストは真田広之、浅野忠信、菊地凛子、柴咲コウ、赤西仁といった面々。ダークファンタジーの要素もある斬新な作りは賛否両論も呼んだが、キアヌにとって少年時代の憧れ、サニー千葉の愛弟子でもある真田との共演は感慨深く、2人には熱い友情が生まれた。
 
キアヌと真田は「ジョン・ウィック:パラベラム」で再共演するはずだったが、真田のケガで断念。最新作「ジョン・ウィック:コンセクエンス」での念願のタッグでは、キアヌから真田への深い敬愛も感じられる。
 
日本との深い関係が〝たまたま〟ではなく、〝心から〟生まれたことが伝わるので、われわれはキアヌ・リーブスを愛してやまないのだ。
 

<画像使用の作品一覧>

「47RONIN」
4K Ultra HD+ブルーレイ:6589円(税込み)
Blu-ray:2075円(税込み)/  DVD:1572円(税込み)
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2023年9月現在の情報です。


「ドラキュラ」
デジタル配信中
Blu-ray:2619円(税込み)/DVD:1551円(税込み)
4K ULTRA HD & ブルーレイセット:5217円(税込み)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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ライター
斉藤博昭

斉藤博昭

さいとう・ひろあき 神奈川県出身。フリーランスのジャーナリストとしてさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。「Yahoo!ニュース エキスパート」でコラムを随時更新中。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワードを決めるCCA会員。

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