「ジョン・ウィック」より Motion Picture Artwork © 2015 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. © David Lee

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2023.9.19

キアヌ・リーブスの変わらぬ魅力を徹底解剖:引かぬ! 諦めぬ! 愛妻の思い出胸に抱くサムライがたどる復讐の連鎖 「ジョン・ウィック」のたどった道

最新主演作「ジョン・ウィック:コンセクエンス」が9月22日(金)に公開されるキアヌ・リーブス。来日プロモーションはかなわなくなったものの、公開を前に「ジョン・ウィック」シリーズの紹介、俳優としてのキャリアに人となりなど、全方位的にキアヌの魅力に迫ります。

勝田友巳

勝田友巳

第4作「コンセクエンス」の公開迫る「ジョン・ウィック」シリーズ。2014年製作の第1作の後、17年の「チャプター2」、19年の第3作「パラベラム」を経て、「コンセクエンス」まで実に9年の長きにわたるサーガとなった。
 
しかしこの間、物語の中では実は2週間ほどしかたっていない。いわば「つづく」で終わる連続もの。1作ごとに見ても十分面白いが、経過を押さえていないと「?」も浮かびそう。というわけで、ジョン・ウィックのたどった道、おさらいしてみた。
 

「ジョン・ウィック」より 

子犬殺したロシアマフィアに制裁「ジョン・ウィック」(2014年)

記念すべきシリーズ第1作。ジョン・ウィックは裏社会を支配する組織「主席連合」の伝説的殺し屋だった。愛妻のために引退し平穏な生活を送っていたが、妻は病死。悲嘆のさなかに生前の妻が最後の贈り物として託した子犬が届く。ところがある日、ジョンの車を狙った強盗が押し入り、愛犬を殺して去って行く。復讐(ふくしゅう)と車の奪還を誓ったジョンは、自宅の地下室にコンクリート詰めにして封印していた武器を掘り出した。
 
犯人はロシアマフィアのボス、ビゴ・タラソフの息子ヨセフだった。ビゴは200万ドルの賞金をかけてジョン暗殺指令を出し、ジョンの親友の殺し屋マーカスにもジョン殺しを依頼する。しかしジョンは、マーカスのひそかな援護を受けてビゴを追い詰め、ヨセフの居場所を聞き出して殺害。今度は息子を殺されたビゴが復讐に乗り出し、指令に背いたマーカスを殺す。ジョンは一騎打ちの果てにビゴを倒すのだった。
 

「ジョン・ウィック」より

低予算作品に斬新アイデア満載

主演のキアヌ・リーブスが、「マトリックス」シリーズのアクション監督だったチャド・スタエルスキに脚本を送り「監督したら」と持ちかけたことが製作のきっかけ。スタエルスキは初めての監督で、建て付けは低予算のアクション映画だった。
 
しかし妻への思いを胸に寡黙に目的に突き進むジョンのキャラクター、ガンアクションに寝技や関節技を多用する接近戦を混合したアクションで、ジャンルを刷新。米国公開では口コミで評判が広がり、北米興収4300万ドルのスマッシュヒットとなって続編製作が決まった。
 
10歳で柔道を始めたというスタエルスキは、日本のマンガやアニメの大ファン。黒澤明への心酔も公言する。多くの武道や格闘技を習得し、ハリウッドのスタントマンとして活躍。「マトリックス」でキアヌ・リーブスの吹き替えをしたことで注目され、スタントチーム「87イレブン・アクション・デザイン」を設立した。多くの現場でスタントのコーディネートからアクション監督まで幅広く担当する。
 
「それぞれが違う役割だ。アクション映画の監督でもアクションができる人は少ないが、自分は全て分かっている」とその経験を存分に生かした。とはいえまだ慣らし運転。「できるだけシンプルに『犬が死ぬ、全員が死ぬ』の2幕構成」と振り返る。
 

「ジョン・ウィック」より

主席連合、コンチネンタル‥‥‥独自の世界観

アクションは日本や中国の武術の技が多く取り入れられているし、ジョンと戦う相手との間には武道家同士の連帯と敬意があって、ハリウッドの善悪対立と異なった関係性が描かれる。日本やアジアびいきはリーブスにも共通し、「マトリックス」で学んだカンフーに加え柔術など格闘技を鍛錬し、カーアクションや銃器の取り扱いも習得。様式美とリアリティーが共存するアクションを実現した。
 
第1作は、シリーズの世界観の基礎となった。世界の犯罪組織が集まった主席連合は裏社会の秩序を保つため、厳しい掟(おきて)を作り、違反者に容赦なく罰を与える。ニューヨークのホテル「コンチネンタル」は、殺し屋たちの定宿で、武器の供与や医師の手配などさまざまな便宜を図り、「ホテル内での殺しはご法度」の聖域。支配人のウィンストン、コンシェルジュのシャロンはジョンの古い友人にして理解者で、シリーズに欠かせない脇役だ。
 

「ジョン・ウィック:チャプター2」より TM&©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

イタリアマフィアと血の誓約 「ジョン・ウィック:チャプター2」(2017年)

物語は前作の5日後、ジョンが第1作で倒したビゴの弟の元にあった愛車を奪還する激しいカーアクションで幕を開ける。裏社会に戻ったことを知った元仲間のイタリアマフィア、サンティーノがジョンを訪れた。主席連合の幹部の座を狙うサンティーノは、ジョン引退前の最後の仕事で交わした「血の誓約」を持ちだして、邪魔な姉ジアナ殺害を依頼する。
 
血の誓約は主席連合の掟で、助けを求める代わりに必ず返済しなければならないのだ。ジョンが断るとサンティーノは見せしめにジョンの家を焼き払う。ジョンが姿を見せるとジアナは自ら命を絶ち、誓約から自由になったジョンは、愛妻との思い出の家を奪ったサンティーノへの復讐に向かう。
 
サンティーノはジョンに700万ドルの懸賞金をかけて返り討ちを図るが、ジョンはコンチネンタルに逃げ込んだサンティーノと対面。ウィンストンの制止を振り切って撃ち殺した。掟を破ったジョンはコンチネンタルのサービスを受けられなくなり、ウィンストンから餞別(せんべつ)の「チケット」と1時間の猶予を与えられて、殺し屋だらけの町の中に孤立無援のまま走り出る。
 

「ジョン・ウィック:チャプター2」より

キング、防弾スーツが登場

「血の誓約」の掟は、この後のシリーズでも重要な役割を果たす。また、路上生活者を束ねた犯罪組織の支配者、キングも初登場。主席連合と距離を置き、ジョンに便宜を図りながらも手放しの支援もしない中間的存在だが、ネットワークと影響力は絶大だ。主要人物の一人となる。
 
撃たれても平気なセラミック素材の防弾スーツの着用も本作から。以降の作品では標準装備で、アクションの重要アイテムとなる。パーティーの雑踏の中、迷路のような夜の地下道など戦闘のロケーションも多彩に。
 
ローマでの階段落ちアクションは「コンセクエンス」で大幅にスケールアップして反復される。クライマックスの鏡の迷路は、ブルース・リー「燃えよドラゴン」へのオマージュだろう。日本での興行成績は前作とトントンだったが、全米では倍増。第3作に弾みが付いた。
 

「ジョン・ウィック:パラベラム」より Ⓡ, TM & © 2019 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

主席連合を敵に回し 「ジョン・ウィック:パラベラム」(2019年)

「パラベラム(Parabellum)」はラテン語で「戦いの準備」の意味。第2作の終幕と直結し、ジョンがニューヨークの町中を走る場面から始まる。ジョンの懸賞金は1400万ドルに上がり、1時間の猶予が切れる前から殺し屋が迫る。ジョンは自分を育てた組織「ルスカ・ロマ」に支援を求めた。一方主席連合の「裁定人」はジョンを助けた罰として、ウィンストンにコンチネンタルからの退去を命じ、キングを刀で斬り倒す。
 
ジョンは主席連合を束ねる「首長」を探し出し、暗殺指令の中止を訴える。首長はジョンを助ける条件としてウィンストン殺害を命じ、ジョンは愛妻との結婚指輪ごと左手の薬指を切り落とし主席連合への忠誠を誓うのだった。
 
ところがニューヨークに戻ったジョンは、ウィンストンと共に主席連合の命令を拒否。現れた主席連合の戦闘部隊をジョンとシャロンが率いるホテル軍団が撃退すると、裁定人はウィンストンに協議を持ちかける。支配人に戻すことを約束されたウィンストンは、見返りにジョンに銃弾を撃ち込んだ。ジョンはホテルの屋上から転落するものの生き延びて、やはり生き残ったキングと共に反撃を誓う。
 

「ジョン・ウィック:パラベラム」より

「善玉vs悪玉」ではない武士道精神

第3作では砂漠に住む「首長」が登場し、主席連合にはさらに上層部があることが示される。ジョンがロシア・ベラルーシ系の犯罪組織ルスカ・ロマに育てられていたことも明かされた。ゲスト出演のハル・ベリーは長期間の訓練を積んでアクションに挑み、銃と武術をミックスしたアクションを見事にこなしている。
 
シリーズの物語構造は、起承転結の定型よりもロールプレーイングゲームに近い。ゴールを目指すジョンは困難に遭遇し、出会った人物と戦ったり助けられたりしながら乗り越える。第1作は一直線の復讐劇だったが、次第に物語は重層的になりゴールまでの道のりも遠く複雑になっていく。スタエルスキは「1、2作は善玉対悪玉の構造で、評判はまずまずだったけど、気に入っていない。3作目では同じことはしたくなかった」と語っている。
 
ジョンを追う殺し屋ゼロは、すご腕にしてジョンの信奉者。敵味方というよりアスリート同士のよう。信義や大義、名誉、道を極めた者同士の恩讐を越えた連帯といった〝武士道精神〟は次第に強く太く表れ、第4作に流れ込む。「パラベラム」はいかにも「次回に続く」的な幕切れだが、スタエルスキは「1作ごとに、やりきったと思う。アイデアが出れば続きが作られる」と話している。
 
 
<画像使用の作品一覧>

「ジョン・ウィック」
4KUHD・ブルーレイ・DVD発売中/デジタル配信中
期間限定価格版ブルーレイ:2750円(税込み)
期間限定価格版DVD:1980円(税込み)
発売元・販売元:ポニーキャニオン
※2023年9月現在の情報です。

 

「ジョン・ウィック:チャプター2」
4KUHD・ブルーレイ・DVD発売中/デジタル配信中
スペシャル・プライス版ブルーレイ:2750円(税込み)
スペシャル・プライス版DVD:1980円(税込み)
発売元・販売元:ポニーキャニオン
※2023年9月現在の情報です。

 

「ジョン・ウィック:パラベラム」
7.26発売 トリロジースペシャル・コレクション、スペシャル・プライス版ブルーレイ&DVD
4KUHD発売中/デジタル配信中
トリロジースペシャル・コレクション 4KUHD:9680円(税込み)
トリロジースペシャル・コレクション ブルーレイ」:7480円(税込み)
スペシャル・プライス版ブルーレイ:2750円(税込み)
スペシャル・プライス版DVD:1980円(税込み)
発売元・販売元:ポニーキャニオン
※2023年9月現在の情報です。

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ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

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