最新主演作「ジョン・ウィック:コンセクエンス」が9月22日(金)に公開されるキアヌ・リーブス。来日プロモーションはかなわなくなったものの、公開を前に「ジョン・ウィック」シリーズの紹介、俳優としてのキャリアに人となりなど、全方位的にキアヌの魅力に迫ります。
2023.9.16
キアヌ・リーブスの変わらぬ魅力を徹底解剖:ストイックな求道精神でアクションスターを究める
今でこそ信じられないことだが、売り出し中の若手俳優だった1980年代のキアヌ・リーブスにアクションスターのイメージはなかった。ナイーブだが恵まれたルックスと存在感からスター街道を進んでいくことは間違いないと思われたが、インディペンデントでエッジな低予算作をあえて出演作に選ぶなど、ハリウッドのメインストリームにのまれることに抵抗する反逆児に見えていたのだ。
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アクション初主演作「ハートブルー」はスター自らアクションを演じる先駆けに
ところが91年、初めてアクション大作の主演という看板を引き受けたのが、キャスリン・ビグロー監督の「ハートブルー」だった。キアヌが演じたのは、正体不明の銀行強盗団を探るため、ロサンゼルスのサーファーたちのコミュニティーに潜入するFBI(米連邦捜査局)捜査官ジョニー。
カリスマ的な強盗団のリーダーとの間に友情が芽生え、任務とのはざまで板挟みになるプロットは「ワイルド・スピード」(2001年)1作目と酷似しているが、「ワイスピ」の公開が10年後であることを思えば「ハートブルー」が元ネタだと考えるのが妥当だろう。
犯罪映画にサーフィンやスカイダイビングといったアドレナリンが噴出するスポーツ要素をミックスした「ハートブルー」は、キアヌのアクションの原点であり、求道的なアクションへのアプローチの出発点にもなった。
キャスリン・ビグロー監督は極力スタントマンなしで撮影しようとしたため、メインキャストは撮影のない週末もアクションの特訓を課せられたという。さらにキアヌは撮影二カ月前からハワイでサーフィン修業に励み、元フットボール選手という設定だったためUCLAのコーチについてクオーターバックとしても練習を積んだ。
「ハートブルー」は興行面では大成功とはいかなかったが、後に数多くの熱狂的ファンを生み、映画「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」(07年)に主人公たちの感涙映画として登場したり、さらにエクストリームスポーツの要素を強化したリメーク作も作られたりもした。キアヌのアクション路線の原点というだけでなく、映画スターが自らスピーディーなアクションを演じる時代の先駆けだといっていい。
「スピード」より ©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
タイムリミットスリラー「スピード」で通好みからメジャーなアクションスターへ
そして94年、キアヌはタイムリミットスリラー「スピード」で大ブレークを果たす。キアヌが演じたのは、爆弾が仕掛けられた路線バスの乗客を救おうとするSWAT(特殊部隊)隊員ジャック。一度走り出したら時速80kmを下回ると爆発するという緊迫した状況の中、人命救助に体を張る主人公をストイックに熱演し、興行的にも大成功。キアヌは通好みの若手俳優から一躍メジャーなアクションスターとして認知されるようになった。
さらに99年には、斬新な映像表現で世界を驚かせたSFアクション巨編「マトリックス」に主演し、「スピード」をはるかに上回る世界興収4億6351万ドルをたたき出す。「マトリックス」は社会現象になり、キアヌは名実ともにハリウッドを代表するトップスターにのぼりつめる。
「マトリックス」より ©1999 Village Roadshow Films (BVI) Limited. © 1999 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
「マトリックス」でアクションスターとしての地位を確立
「マトリックス」で監督のウォシャウスキー姉妹は、香港のアクション監督ユエン・ウーピンを招聘(しょうへい)。キアヌら出演陣は香港直伝のカンフースタントとワイヤアクションの薫陶を受けている。ハリウッドにはカンフーアクションで人気を博した先人にブルース・リーやデビッド・キャラダインらがいるが、ハリウッドメジャーの超大作でここまで香港のカンフーアクションにリスペクトをささげた作品はなかった。キアヌはハリウッドスターとしても得難い特別な経験を積み、このことは後のキャリアにも多大な影響を及ぼしていく。
キアヌの素晴らしさは、アクションスターとして主演するだけでなく、アクションの世界を支える裏方たちにリスペクトを払い、彼らを全力でサポートしていること。
「マトリックス」でキアヌに武術指導をしたタイガー・チェンは、後にキアヌが出資した「Kung Fu Man(原題)」(12年)に主演。さらにキアヌは唯一の監督デビュー作「ファイティング・タイガー」(13年)でもタイガー・チェンを主演に起用し、自らはラスボス的な敵役を演じることでチェンに花を持たせている。
「ジョン・ウィック」シリーズのチャド・スタエルスキ監督も、「マトリックス」でキアヌのスタントマンを務めた旧知の間柄。子供の頃から千葉真一のアクション映画に夢中だったという共通点もあり、キアヌが「ジョン・ウィック」(14年)の企画に誘ったのだという。
「コンスタンティン」より © 2005 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
「コンスタンティン」「47RONIN」など、アクションジャンルの可能性を追求し続ける
さらにキアヌは「コンスタンティン」(05年)では宗教とオカルトとアクション、「47RONIN」(13年)では忠臣蔵をモチーフに時代劇とファンタジーの融合に挑むなど、アクションジャンルの可能性を追求し続けている。
そして現在はキアヌ自身が原作を務めるアメコミの映画化「BRZRKR(原題」を準備中で、半神半人の主人公の8万年に及ぶ戦いを描くというから、アクションやSFをこよなく愛するキアヌの映画人生の集大成的作品になるのではないかと、実現の日を心待ちにしたい。
<画像使用の作品一覧>
「ハートブルー」アドバンスト・コレクターズ・エディション
DVD:1572円(税込み)
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2023年9月現在の情報です
「スピード」
ディズニープラスのスターで配信中
「マトリックス」
ブルーレイ 2619円(税込み)/DVD 1572円(税込み)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
※2023年9月現在の情報です
「コンスタンティン」
Bru-ray:2619円(税込み)DVD:1572円(税込み)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
※2023年9月現在の情報です