ひとしねま

2022.11.06

チャートの裏側:メガヒット時代の微妙さ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

前回3位に下がったが、返り咲きトップである。「ONE PIECE FILM RED」だ。公開から13週目となる。恐るべしと言うべきか。10月29日からは、7回目となるファン期待の入場者プレゼントがあった。同日にはシリーズ作品(2012年)のテレビ放映もあった。興行収入は30日時点で歴代9位の177億円だ。

こちらもある意味、返り咲きである。4月公開で、ハロウィーンに合わせて再上映された「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」だ。3日間で1億9000万円を記録し、累計では944億8000万円に達した。この時点で、シリーズ歴代記録を樹立した。こちらも、恐るべしだろう。

邦画アニメーションの奮闘が続く。今年の大きな特徴だ。興行収入で、見込みを含めた10億円以上の作品は11本(11月上旬までに公開)。本数は昨年より1本増だが、累計の数字は全く違う。今年は、昨年の170%を超える(興収比)。数本の作品が、シェアを独占している。

邦画アニメはメガヒットの時代に入ったと言える。10億円台の中クラスヒットも6本の見込みで、昨年より3本増える。この多層的なヒット構造が、今の邦画アニメの強みだ。ただ、単純に喜んでいいのか。市場全体は活性化しているのか。答えは微妙である。現象の裏には別の現象がある。ここが重要だ。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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